2012 Fiscal Year Research-status Report
直達発生種の遺伝的集団構造に基づく巨大津波による三陸沿岸の生態系撹乱履歴解明
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24651004
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小島 茂明 東京大学, 新領域創成科学研究科, 教授 (20242175)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松政 正俊 岩手医科大学, 共通教育センター, 教授 (50219474)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 三陸海岸 / 巨大津波 / ホソウミニナ / 遺伝的多様性 / 集団構造 |
Research Abstract |
平成24年5月に、過去に巻貝類の分布調査と採集をおこなった岩手県宮古湾から宮城県松島湾までの8地点でホソウミニナおよび近縁巻貝類の分布状況を調査した。宮古湾、山田湾、長面浦、雄勝湾では主要な生息地が津波により破壊されたり、地盤沈下により失われたりしていたが、いずれも近隣に少数の個体が生存している事が確認された。震災前に採集し、保存されていたサンプルを用いて、ミトコンドリアDNAとマイクロサテライトマーカーを併用した集団解析をおこなった。その結果、三陸沿岸に同所的に出現する対馬暖流流域に沿って分布する個体群と黒潮流域に沿って分布する個体群の間にマイクロサテライト組成の有意な差異は認められず、両者が自由に交配している事が示された。また人間活動による移入が集団構造に及ぼす影響を評価するためのデータを得る事を目的に、人的影響が顕著な東京湾周辺の個体群を対象に同様の解析をおこなったところ、いずれの遺伝子マーカーでも小櫃川河口干潟と谷津干潟の集団で、水産種苗と共に移入したと考えられる遺伝子が検出された。この結果から集団構造データに基づいて人為的移入の影響の有無を判定する事が可能であると考えられた。 少数の残存個体が確認された上述の生息地のうち、宮古湾の津軽石川河口干潟と山田湾織笠川河口干潟において個体群の回復過程を追跡調査した。その結果、津軽石川河口干潟の砂泥底の地点では、6月と9月から10月に殻長6~8mmにモードをもつ新規加入群が認められた。織笠川河口干潟の砂礫底の地点においても7月および9月に明らかな新規加入群が確認され、三陸北部におけるホソウミニナの新規加入は春と秋にピークを持つと考えられた。一方、織笠川河口干潟上部の砂泥底では津波直後から比較的多数の個体が確認されていたが、幼貝の新規加入は認められず、再生産の場としては不適であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ホソウミニナのマイクロサテライトのマルチプレックス解析系が利用可能になり、多数の個体の遺伝子型を効率的に判定する事が可能になった。過去を復元する基礎となる震災前の三陸海岸のホソウミニナ集団の集団構造データを揃える事ができた。また、生息地での継続的な分布状況および個体群動態の調査によって、三陸海岸における本種の生活史に関する知見が得られつつある。こうしたデータに基づいて三陸海岸各地域の個体群の履歴を推定する研究を本格化させる事が可能になった。
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Strategy for Future Research Activity |
三陸海岸におけるホソウミニナの生活史調査を継続し、年変動を把握するとともに、繁殖成功度の空間変異に関する解析も試みる。三陸海岸におけるホソウミニナ集団の遺伝的構造をさらに詳細に解析するとともに、得られたデータに基づいて、地域個体群の履歴を復元する手法の開発を進める予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
三陸海岸におけるホソウミニナの生活史調査のために旅費と消耗費を支出する。三陸海岸におけるホソウミニナ集団の遺伝的構造のために消耗品費を支出する。
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Research Products
(3 results)