2014 Fiscal Year Annual Research Report
直達発生種の遺伝的集団構造に基づく巨大津波による三陸沿岸の生態系撹乱履歴解明
Project/Area Number |
24651004
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小島 茂明 東京大学, 新領域創成科学研究科, 教授 (20242175)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松政 正俊 岩手医科大学, 共通教育センター, 教授 (50219474)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 三陸海岸 / 巨大津波 / ホソウミニナ / コアレセント理論 / ベイス法 / 集団サイズ変動 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成24年に岩手県山田湾から宮城県櫃ヶ浦の7地点で採集したホソウミニナを対象に、ミトコンドリアDNAのCOI遺伝子および核DNAの内部転写スペーサー領域(ITS1)の塩基配列を用いて、コアレセント理論に基づいてベイス法により集団サイズ(集団に属する個体数)の変動を推定した。2つの領域単独および両者を合わせた解析のいずれも最終氷期中の集団サイズの減少と氷期後の現在まで続く増加を示した一方で、近年の巨大津波による集団サイズの変動は検出されなかった。これは巨大津波後の集団サイズの回復が、両遺伝子領域の分子進化速度に対して短い時間で完了するためと考えられる。 次にホソウミニナのマイクロサテライトを対象に昨年度開発した14種類およびにMiura et al. (2013)により開発された14種類のマーカーを用いて、平成12、18、20、23(震災後)、24、26年に採集された個体のマイクロサテライトデータに基づいて過去の集団サイズの変動を推定したところ、東日本大震災後のサンプルでのみ、東日本大震災に伴う巨大津波によるものと考えられる急激な集団サイズの減少が検出された。その減少率は55~80%であった。一方、今回の震災でほとんど被害を受けなかった福島県松川浦のサンプルから、より古い年代の集団サイズの減少が検出された。減少率は86%で、推定年代は昭和35年のチリ津波と概ね一致した。異なる年と場所で採集された個体から得られたデータを統合した解析をおこなったところ、東日本大震災とチリ津波による集団サイズの減少が検出され、減少率はそれぞれ72%と74%と同程度であった。チリ津波後に集団サイズの回複が認められないのは、ホソウミニナがプランクトン幼生期を持たない直達発生種である事に加えて、近年の沿岸開発により三陸海岸の干潟が分断され、地域集団間の分散が困難になったためと考えられる。
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Research Products
(1 results)