2012 Fiscal Year Research-status Report
氷中の水分子の高速拡散メカニズム解明-粒界拡散の役割-
Project/Area Number |
24651008
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Research Institution | Nagaoka University of Technology |
Principal Investigator |
高田 守昌 長岡技術科学大学, 工学部, 助教 (50377222)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 拡散 / 連続自動融解分析 / CFA / 粒界 |
Research Abstract |
氷床コアによる古気候の高精度解読が行われている。解読の指標として水の安定同位体や氷中に含まれる不純物成分が用いられているが、これらは氷中で拡散移動するため、堆積時の環境を知るためには、拡散効果を考慮する必要がある。そこで、多結晶氷において拡散効果について検討するため、3次元的な試料により水分子の安定同位体拡散実験を行い、2次元的な水分子の安定同位体分布を測定し、この時間変化より、主要な拡散経路について知ることが研究目的であった。本年度は2次元的な水分子の安定同位体分布を測定する装置の開発を主に行う予定であった。 しかし、当初使用しようとしていた質量分析器の故障により、水の安定同位体の分析が難しくなり、また液体イオンクロマトグラフ分析器の入手したことにより氷中の不純物の移動について検討することとした。そこで、氷床コアの連続自動融解分析システム(CFA)を開発している国立極地研究所と連携し研究を進めることとした。ただし、このCFAは海外機関に比べて大きく遅れており、また本研究に必要な高分解能な分析を目的としていないことから、融解装置と液体イオンクロマトグラフを組合せ、高空間分解能で分析可能なCFAの開発を進めることとした。まず、CFAの主要機器であるイオンクロマトグラフ分析器、送液ポンプ、流路切替えバルブを外部から制御するプログラムを作成し、それぞれがコントロールが可能な状況となった。CFAとしては、このプログラムを組合せていくので準備が整った状態である。また、上述のCFAを用いず、マイクロトームにより氷試料から微小量を削取り、液体イオンクロマトグラフへ数μLの試料を導入する方法の準備を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
装置故障などの諸事情により、研究計画の見直しを中心として行ったため、当初の目標への進捗は少なく、達成度としては低い。ただし、今後の研究の推進方策で述べた氷中の不純物である化学成分の拡散実験を行う準備を開始しているので、従来の研究目的への達成へは遅れているが、氷中の物質の移動という側面も含めると目的として研究は進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
研究実績の概要で述べたが、当初予定していたレーザーアブレーションおよび質量分析装置による2次元的な測定装置の開発は、質量分析器の故障によりできなくなった。そこで、3次元的な結晶粒界ではなく、人工的に作成した2次元的な結晶粒界をもった試料を作成し、この試料を用いて不純物の拡散実験を行うこととする。 そこで、拡散後の氷試料から、微小量をCFAにより、あるいは融解試料として高精度に抽出し分析する手法を確立し、氷中の不純物の拡散の粒界効果について明らかにすることを研究の方針とする。拡散実験は拡散のための待ち時間が必要なため、研究期間内には実験および分析方法の確立まで完了する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究実績の概要や今後の研究の推進方策で述べたように、氷試料から微量試料の抽出する方法の確立、CFAの開発、分析器の消耗品購入のために主に物品購入費を充てる。極力無駄に使用せぬよう、外注による開発による費用ではなく、研究代表者が関係者と協力し、必要な部品として購入するものとする。また、学会参加や関係者と連携のための旅費を使用する。また少額であるが謝金や論文出版に必要な費用に利用する。
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