2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24651012
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
吉村 和久 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (80112291)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松岡 史郎 新潟大学, 自然科学系, 教授 (10219404)
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Keywords | 磯焼け / 河川水 / 洪水流出 / 溶存鉄 / 固相分光法 / スペシエーション分析 / 試料採取法 / Fe(II)試料保存法 |
Research Abstract |
前年度、速やかに酸化されるFe(II)を測定するための固相分光法によるオンサイト分析法を確立し、山地渓流水においてもFe(II)が数ppb存在することを現地で確認した。ただし、Fe(II)の酸化を防ぐことができれば、研究室まで試料を持ち帰り、より性能の良い装置を用いた定量が可能となる。そこで、測定までの試料の保存法について検討を行った。二酸化炭素を試料に溶解させればpHと酸素分圧を低下させることができ、Fe(II)の酸化を抑制できることをオンサイト分析により確認した。二酸化炭素溶解後、1時間以内にろ過をし、pH 2にするFe(II)の固定法を確立できた。この方法を用いて河川の溶存鉄のスペシエーション分析を行い、河川底層には貧酸素状態の局所的還元環境があり、そこにFe(II)が高濃度で存在していることが分かった。 多々良川水系の河口より約2 km上流の雨水橋において平水時(流量1 m3/s:2013年12月6日)と増水時(流量74 m3/s:10月11日;170 m3/s:10月24日)の溶存鉄のスペシエーション分析を行った。主要成分はほとんどが増水時よりも平水時のほうが高かったが、Fe(II)濃度はそれぞれ5、13、16 ppbと、増水時のほうが高くなった。平水時に河川底層に存在していた溶存鉄が増水により、河川全体に混合されたためである。博多湾へのFe(II)フラックスは平水時よりも増水時のほうが100倍以上大きくなることが分かった。 新日鐵住金との共同研究として、長崎県壱岐および大分県名護屋湾において、鉄肥料の施肥効果の有無を確認するために溶存鉄スペシエーション分析を行った。施肥を行った海域ではFe(II)濃度が高いことはわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
全体としては、ほぼ目的を達成できたと評価できる。河川から、洪水時に多量のFe(II)が短時間に海域に供給されていることを定量的に示すことができた。ただし、海域における溶存鉄スペシエーションとの因果関係はまだ明らかにできていない。
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Strategy for Future Research Activity |
1.福岡市多々良川水系について集中的に調査を行う。特に、洪水時に海域に運ばれる溶存鉄フラックスについて、流量との関係を明らかにする。 2.固相分光法で明らかとなった溶存鉄スペシエーションに関して、化学平衡論的にその理解を試みる。 3.特に、壱岐において、磯焼け、健全、施肥海域の溶存鉄スペシエーション分析を継続し、情報を蓄積することで、溶存鉄の供給源および磯焼けと溶存鉄濃度との関係を定量的に明らかにする。
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