2013 Fiscal Year Research-status Report
海塩粒子エアロゾル中のジカルボン酸と海水表面を覆う薄い有機膜との関係
Project/Area Number |
24651013
|
Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
新垣 雄光 琉球大学, 理学部, 教授 (80343375)
|
Keywords | 海水 / マイクロレイアー / 活性酸素 / ヒドロキシルラジカル / 光化学反応 / 海塩エアロゾル |
Research Abstract |
海水表面は、厚さが50~1000μm程度の非常に薄い有機物の膜(Sea Surface Microlayer:以下SMLと略す)で覆われている。SMLは、大気-海水間の化学物質の移動を制御し、さらに、海表面で波が砕ける際に発生する海塩粒子エアロゾルの化学組成及び粒径に大きく影響する。そこで、本研究では、SMLから大気へ拡散していく有機物、特に、大気エアロゾル中の有機物の中で最も多いと報告されているジカルボン酸に着目し、その挙動および発生メカニズムを解明することを目指した。海水表面へ人工的に風を送り、海塩粒子を発生させ、海塩粒子エアロゾル中のジカルボン酸に対するSMLの役割、さらに、SML中で光化学反応により生成・分解するジカルボン酸の挙動を明らかにすることを目指した。また、海水中で有機物の反応をコントロールするOHラジカルにも注目し、その発生メカニズムにおいて重要なフェントン反応(Fe(II)と過酸化水素の反応)にも注目し、研究を実施した。 研究2年目は、SMLから大気へ拡散する海塩粒子エアロゾルの発生法および採取に必要な機材を購入し、開発および改良を進めた。また、SML中とバルク海水中で光化学反応によって発生する過酸化物に着目し、過酸化物を有機過酸化物と過酸化水素に分けて計測を実施した。これは、昨年度実施したフェントン反応の寄与を調べた研究において、予想に反して、フェントン反応の寄与が小さかったことから、過酸化物の光化学的な挙動について検討したものである。過酸化物の中で、有機過酸化物については、光照射されてもほとんど生成が見られなかったが、過酸化水素については、TOC濃度に比例し、光生成速度が増加する傾向が見られた。この結果は、SMLに含まれる有機物とバルク海水に含まれる有機物が大きく異なることが予想されるものの、単に、TOC濃度だけに影響されることを示唆している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究2年目は、SMLから大気へ拡散する海塩粒子エアロゾルの発生法および採取に必要な機材を購入し、開発および改良を進めた。また、SMLとバルク海水の両方を用いて光照射実験を行い、過酸化物(有機過酸化物と過酸化水素)の挙動を調べた。これは、OHラジカルの生成に重要なフェントン反応を理解する上で重要であり、海水中での有機物の分解過程(ジカルボン酸の発生メカニズム)において重要な活性酸素種の挙動を把握するためであった。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究最終年度の3年目は、SML中で光化学反応により生成・分解するジカルボン酸に関する研究を主に実施し、光化学反応による生成・分解に関する反応速度論的なメカニズムの解明を目指す。また、実験結果を総合的に解析し、研究成果をまとめ、学術論文として投稿する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
予算執行は、計画的に実施されていたものの、年度末に計画していた試薬やガラス器具の購入が間に合わず、次年度への繰り越しとなった。 研究遂行に必要なガラス器具や試薬および海水試料採取に必要な旅費に使用する予定である。
|