2012 Fiscal Year Research-status Report
無人観測システムによる南極大陸沿岸域の海氷変動機構の解明
Project/Area Number |
24651016
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | National Institute of Polar Research |
Principal Investigator |
牛尾 収輝 国立極地研究所, 研究教育系, 准教授 (50211769)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 海洋科学 / 環境変動 / 極地 / 南極 / 海氷 |
Research Abstract |
南極大陸沿岸域における海氷変動機構の解明に向けて、海氷成長・融解に関する現地データを取得する無人観測システムの開発・製作に着手した。同システムを南極海氷域に導入する新たな研究観測の準備を進めると共に、既存の衛星リモートセンシング・現地観測データの解析も継続して、沿岸海氷の年々変化特性の抽出と今後の研究観測を展開する上で重要となる視点の明確化を計画初年度の主目的とした。 平成24年9月14日に、研究代表者、連携研究者および観測システム製作経験を有する企業の技術者と会合して、観測システムの設計・開発方針および現地観測、現地-国内間データ送受に関して検討した。その検討内容を軸として、詳細について随時メールと電話で関係者で相互に確認し、システム設計方針を確定した。年度後半においてシステムの製作を進め、2月末に完成した。 既存データの解析結果からは、南極大陸沿岸海氷の消長過程の理解を進める上では、海氷上の積雪深変化を捉える重要性が従来以上に高まっていることを認識した。これは平成23年度に採取した海氷試料の解析からも裏付けられた知見で、特に昭和基地付近の多雪域の海氷上では、深く積もった積雪層の一部が氷に転化している現象が生じていることを捉えた。そこで、本課題で開発する観測システムにも積雪深センサを組み込むこととした。 観測システムの設計、製作においては、現有物品の活用によって良質なデータ取得が可能であることを確認し、積雪深データを含む一連の現地観測データが研究上、極めて有効である見通しを得た。当初計画では平成25年度にシステム改善を予定していたが、上記の研究進展に伴い、平成24年度に早めてシステム改良を行った。そのため物品購入経費の追加が必要となり、前倒し支払いを請求して以降の研究・開発を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度計画の第一目標としていた観測システムの製作が完了した。既存データの解析結果や設計方針を検討する過程で、積雪データの取得の重要性を再認識し、一部の改良を前倒しで行うことによって、目的に沿ったシステム開発を進めることができた。しかし、当初予定していた、国内におけるフィールド試験は取り止めた。その理由は、気象や湖氷など自然環境によって、試験の条件や結果が大きく影響を受けると判断したためである。それに替えて、2年次に低温室内における機器動作試験を行うこととした。 既存データおよび海氷試料の解析から、海氷成長・融解に及ぼす積雪の果たす役割の重要性が明らかとなった。この知見も加えて、過去数十年規模の沿岸海氷の年々変化(崩壊・流出発生の有無)とその物理過程の考察、および観測船の砕氷航行支援のための資料作成にも取り組むことができた。この観点での研究は、研究代表者所属機関で行っているプロジェクト研究と連携させて、効果的に進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、前年24度に製作した観測システムの最終的な耐寒試験を低温実験室内で確認し、低温環境がシステム動作に及ぼす影響を明らかにする。この試験は、研究代表者の所属機関が有する低温実験室を利用して行う。また、南極の現地へのシステムの持込み準備や既存データ解析の継続、次年度計画に向けた総括のための成果論文の準備を当初計画に従って実施する。 当初は平成25年度に計画していた観測システム改良を、早期の平成24年度に実施したことで、観測システムの最終調整や国内試験などの一連の改善や南極の現地に関わる諸準備に専念できる時間が確保され、開発、製作、国内試験を経て、現地観測に向けた検討と調整を綿密に行なうことができる。 平成26年度は当初計画に変更はなく、「計測データ解析と成果取りまとめ、将来計画に向けた検討」および「成果発表および報告書作成」に従って、研究成果と総括と次の研究への発展に向けた計画検討と研究申請を行なう。 以上のように、国内準備、既存データ解析、現地観測、新規データ解析、成果とりまとめまで3か年にわたる研究計画を円滑に進めることができ、所期の目的達成も見込まれる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
観測システムの低温環境下試験の結果にもとづいて、一部の改良必要性に備えて、物品費を使用する。また、同システムを南極海氷域の現場に導入してデータ取得を開始するために、平成25年度の日本南極地域観測隊(第55次観測隊)に参加して、機器の稼働、試験データ取得を担当する同行者を派遣する。その派遣のために旅費を使用する。研究成果を論文として公表するために必要な経費をその他の費目から支出する。
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Research Products
(3 results)