2012 Fiscal Year Research-status Report
環境が選んだ海底下未知微生物の機能を環境条件を用いた発現を鍵として読み解く
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24651018
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
諸野 祐樹 独立行政法人海洋研究開発機構, 高知コア研究所, サブリーダー (30421845)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 遺伝子機能 / 海底下 / 未知微生物 / 遺伝子発現 / evoglow |
Research Abstract |
本研究では、海底下という、広大かつ未知領域の大きい環境を対象とし、現場環境条件から導き出される基質誘導をアクセスの扉とした機能遺伝子発現解析(SIGEX:Substrate Induced Gene Expression)を応用し、環境条件を鍵として環境微生物の未知機能に迫る。本年度は申請計画通り、良質なライブラリー作成を実現するための手法改良とゲノムライブラリーの作成を行った。まず、ライブラリー作成のためのDNA抽出について検討を行ったところ、物理的細胞破砕を行った後にも多数の細胞が残存していることが明らかとなったため、抽出法の効率化を行い、試料中に存在する微生物の60-80%程度からDNAを抽出することに成功した。一方で、統合国際掘削計画(IODP)の337次八戸沖掘削航海に乗船研究者として参画し、科学掘削としては世界最深部の海底下2460mから試料を取得した。南太平洋還流域(SPG)試料とともにDNA抽出、および研究の円滑な進行のために前年度前倒しで作成しておいた嫌気仕様TA-TOPOベクターを用いてライブラリー作成条件の最適化を行い、現在までのところ、SPG掘削試料から6試料でDNAを取得してライブラリーを作成した。ライブラリーを構成する形質転換体のバリエーションは100万を超え、目標の10倍以上、1ライブラリーあたり5Gbp~180Gbpの遺伝子断片を有するライブラリーの構築を成し遂げた。また、南海トラフ掘削試料を用いて作成したライブラリーからはハロゲン応答遺伝子群を取得、シーケンス解析を行った結果、脱ハロゲンに関連する可能性のある遺伝子群を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」にもあるように、本研究は、課題実施計画に挙げた項目に沿って順調に進行している。短い研究期間の間に最大限の成果を得るために嫌気仕様TOPO-TAベクターの作成を前倒しで行ったことが功を奏した。また、それによって、ベクターへの遺伝子断片挿入、形質転換反応、その後の培養など、ライブラリー作成にかかるすべてのステップを綿密に検討することができ、当初見込みの10倍以上という高いライブラリー作成効率を達成することができた。試料としては、申請計画時に予定していたものに加え、本年度前半にはIODP第337次掘削航海に参加し、新たに科学掘削史上最深部からの試料を得ることもできた。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度には前年度に作成したライブラリーを使用して様々な基質を用いた誘導実験、および陽性クローンのソーティングを実施する。多様なライブラリーと多様な基質の組み合わせを試みることにより、遺伝子から得られる環境代謝ポテンシャルと、環境条件とのかかわりについて議論を深める。実際、Lloyd et al.は環境ゲノムから機能未知アーキアの、環境中における生存戦略について極めて重要な発見をしている。ゲノム情報からのアプローチとは異なる角度からSIGEXを用い、これまで未知の部分が大きかった海底下微生物の生態を明らかにしたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
25年度では実施計画通りに研究を進めるため、セルソーター関連の消耗品、酵素や核酸、PCRキットなどの試薬類の購入を行う。また、配列決定結果の解析などのためのソフトウェアなどの購入を検討する。
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