2013 Fiscal Year Research-status Report
湖の年縞堆積物を用いた過去数百年にわたる気候変動復元
Project/Area Number |
24651019
|
Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
原田 尚美 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球環境変動領域, チームリーダー (70344281)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長島 佳菜 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球環境変動領域, 研究員 (90426289)
|
Keywords | 古環境変動 / 湖水温 / 偏西風 / 一ノ目潟 / 湖底堆積物 / 石英 |
Research Abstract |
「地球温暖化」は、地球上の生物圏全体がその影響を被る今世紀最大の環境問題である。大気中二酸化炭素濃度の増加速度を考えると、これまで地球が経験したことのない速度で上昇していることから、地球史上最大の問題とも言える。この環境問題に対し、気温上昇 や海洋酸性化など地球規模の危惧がなされる一方で、環太平洋における地域規模の気候変化について、特に我が国における実態を明らかにした研究例はほとんどない。そこで本研究では、東北地方の湖沼や汽水域に堆積した年縞堆積物(樹木年輪のように毎年の堆積が 縞模様に記録された堆積物)を利用し、過去100~200 年程度まで遡って、年ごとに湖水の表層水温の復元を行い、どの程度の気候変化が生じてきたのかについて明らかにし、同じ年縞堆積物に含まれている中国の砂漠起源のダスト(石英粒子)に記録された偏西風の 卓越場の変動と比較し、偏西風-アジアモンスーンダイナミズムの変動に対して湖沼環境がどのように応答して変動してきたのかについて明らかにすることを目的としている。対象としているのは秋田県一ノ目潟と青森県小川原湖の湖底堆積物である。実施計画は、1.一ノ目潟ならびに小川原湖の湖底堆積物に記録されたアルケノン並びに石英のESR・結晶化度分析による過去の湖水温とダスト供給源変動の復元、2.両湖の表層水中懸濁粒子のアルケノン分析による季節湖水温変化のデータ蓄積とアルケノン水温換算式の構築である。 平成25 年度は、2について、毎月2度、湖水の懸濁粒子の採取を実施し、懸濁粒子中のアルケノン分析を行う計画であり、計画通り、実施することができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一ノ目潟で採取した過去約60年分の柱状湖底堆積物を使用し、過去のダスト降下量の推定を行い、モデルと比較可能なデータセット作成を試行するとともに、ブラックカーボン降下量推定手法の確立を試みた。ダストの主要構成鉱物である石英の物性(電子スピン共鳴信号強度と結晶化度; Nagashima et al., 2007, G-cubed)を分析し、堆積物中の砕屑物に占めるダストの重量割合を推定し、堆積物の堆積速度や乾燥かさ密度の情報と共に、ダスト降下量を計算した。その結果、1960年代と1980年代においてダスト降下量の増加が見られた。また、ブラックカーボン降下量の推定手法の確立についても実施することができた。以上、分析は順調に進捗している。
|
Strategy for Future Research Activity |
東アジアから輸送されるダストとブラックカーボン(BC)それぞれの発生・分布・沈積量、さらにそれらの支配要因の解明を行う。具体的には、一ノ目潟堆積物中のダストおよびBCをできるだけ時間分解能高く分析を行い、全球エアロゾル輸送モデルSPRINTARSおよび長期再解析気象データERA40を用いた長期計算等との比較研究を実施し、気候変動とエアロゾル降下量変動の関連について解析していく予定である。また、昨年同様、一ノ目潟において定期的(月2回)に湖水を採取し、懸濁粒子のアルケノン分析を実施する。3年にわたって蓄積したデータと現場水温との経験式を構築する。湖底堆積物のアルケノン分析についても分析を継続し、構築した水温との経験式を用いて当時の湖水温の復元を行う。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
一ノ目潟湖水の採取について、月2回定期的に採取する費用(役務費)を準備している。これに加えて突発的なイベント(大雨など)が起きた場合に追加で湖水採取を依頼する可能性があり、21795円のうち、2万円についてはこのための費用として年度末まで確保しておく必要があった。1795円については、消耗品購入時の節約による。 平成25年度に引き続き、一ノ目潟湖水の採取の役務費として平成26年度に使用する。
|