2012 Fiscal Year Research-status Report
都市域の地下水中における医薬品類の汚染の実態ならびに挙動の評価
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24651022
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
林 武司 秋田大学, 教育文化学部, 准教授 (60431805)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安原 正也 独立行政法人産業技術総合研究所, その他部局等, 研究員 (40358205)
中村 高志 山梨大学, 医学工学総合研究部, 助教 (60538057)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 都市の地下水 / 地下水涵養機構 / 水質形成機構 / 下水漏水 / 地下水汚染 / 環境同位体 / マルチトレーサー |
Research Abstract |
H24年度は,地下水の起源ならびに下水漏水の評価手法の確立とPPCPs調査地点の選定を目的として,都市化の程度が多様である石神井川流域の上流域と下流域において一斉調査を実施し,地下水,水道水ならびに地表水を採取した.採取した試料は,主要溶存成分,環境同位体(水のδ18O・δD,NO3-のδ15N・δ18O,SO42-のδ34S,DICのδ13C),大腸菌群数(T.coli),大腸菌数(E.coli)を測定した. 水のδ18O・δDから,地下水の起源は降水ならびに上下水道からの漏水と判断された.ただしδ34Sから,少なくとも上流域では,上水道漏水の寄与率は小さいと考えられた.都市化の程度が小さい上流域では,降水寄与率の高い地下水においてCl-濃度やNO3--N濃度,大腸菌群数(T.coli)が高い傾向を示したことから,これらは農地に由来すると考えられた.これに対して都心部に位置する下流域では,地下水への降水寄与率と大腸菌群数(T.coli)が負の相関を示した.大腸菌群数(T.coli)の高い地下水においても大腸菌(E.coli)は検出されなかったが,δ34Sからは下水漏水の寄与が考えられた.一方,主要溶存成分については地点間の差が大きく,降水寄与率との関係は見られなかった.これは,δ15N等の結果を考慮すると,都心部では郊外よりも脱窒等の地球化学反応が盛んに起こっているためと考えられた. 郊外に位置する上流域では,都市化の程度が小さいことに加え,都心部よりも遅れて上下水道が整備されたため,これらの管渠の老化・劣化の程度が少ない.このため,地下水への漏水寄与率が小さい.これに対して,都心部に位置する下流域では上下水道の整備が早くに行われたため,管渠の老化・劣化が進行しており,漏水量が大きいと考えられた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H24年度の調査では,特性の異なる複数の地球化学指標,特に環境同位体を併用することによって,地下水の起源や上下水道漏水の有無,地下での地球化学反応プロセスを既往研究よりも高い精度で検討できることが確認された.また郊外に位置する上流域と都心部に位置する下流域では,上下水道の漏水の程度や地下水の地球化学性状に差異があることも確認された.さらに,今回の調査結果を我々の先行調査の結果と比較したところ,主要溶存成分組成や水のδ18O・δDには顕著な季節的変動が認められなかったことから,地下水の地球化学性状は年間を通じて比較的安定していると考えられた. 一方,今回の調査では,大腸菌群(T.coli)が検出された地点を含め全ての地点において大腸菌(E.coli)が検出されなかった.また,我々の先行研究によってPPCPsが検出されていた地点においても,大腸菌群数(T.coli)は小さかった.これらの結果は,大腸菌群とPPCPsの供給源が異なることや,これらの地下での挙動特性の違いを反映していると考えられ,今後,データを追加して検討する必要がある. これらの知見を踏まえて,地下水中のPPCPs組成を把握することにより,地下でのPPCPsの挙動特性を明らかにできると期待される.
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Strategy for Future Research Activity |
H24年度の調査結果を踏まえて,H25年度は以下の調査を実施する.PPCPsの地下での挙動を検討するために,対象範囲を縮小して調査を実施し,主要溶存成分組成や環境同位体,大腸菌群(T.coli),大腸菌(E.coli)とともにPPCPs組成を把握する.これらの指標の結果を総合的に検討し,PPCPs等の挙動や溶存物質の地球化学反応を検討する.調査地域の選定に際しては,H24年度の調査結果や我々の先行調査の結果を踏まえるとともに,当該地域の地形・地質情報に基づいて地表流域界や地下水面分布をより詳細に検討して選定する.このようにして決定した対象地域において複数回の調査を行うことにより,PPCPs組成等の季節変動についても検討する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H24年度は解析・評価手法の確立を優先して調査を実施したため,PPCPs測定は行っていない.このため,H24年度に計上していたPPCPs測定経費は,H25年度に繰り越して執行する.H25年度は,上記の調査研究を実施するため,調査旅費,分析等に要する消耗品費ならびにPPCPs測定・δ34S測定の委託費として予算を執行する.
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