2012 Fiscal Year Research-status Report
東アフリカ高地のマラリア流行とインド洋大気海洋現象に関する疫学研究
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24651027
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
橋爪 真弘 長崎大学, 熱帯医学研究所, 教授 (30448500)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 気候変動 / インド洋ダイポール現象 / マラリア / アフリカ / 時系列解析 / Wavelet解析 |
Research Abstract |
1990年代に東アフリカ高地で発生した大規模なマラリア流行とインド洋ダイポール現象との関連を明らかにすることを目的とした。 ケニア西部の高地と、隣接するビクトリア湖周辺の平たん地における過去15-75年間にわたるマラリア患者数のデータを収集し、また、気象データ(月別降水量、平均気温、平均相対湿度)および「ダイポール現象」の指標となるインド洋の海面水温、海面高度などの海洋データを収集した。完成したデータベースを用いて、ダイポール指数、エルニーニョ指数、気象データ(月別降水量、平均気温、平均相対湿度)とマラリア患者数との関連についてWavelet解析を行なった。解析は高地と低地それぞれについて行い、両地域間で関連性の比較を行なった。その結果、高地では1990年代にマラリア患者数とダイポールモード指数との相関が高く、インド洋ダイポール現象がマラリア流行に影響を及ぼしたと考えられた。一方、ビクトリア湖周辺の平たん地においてはマラリア患者数とダイポールモード指数との相関は明らかでなかった。 インド洋から運ばれる湿った大気が高地の降雨量に影響を及ぼし、マラリア媒介蚊の発生に関与していると考えられた。これまで1990年代の高地マラリア再流行は、薬剤耐性や土地利用変化、人口移動、エルニーニョ現象、温暖化などが原因と言われてきたが、本研究によりインド洋ダイポール現象が関与していることが証明された。インド洋ダイポール現象の発生が予測できれば、タイミングを逸せず効果的なマラリア流行対策をおこなったり、気候変動によるマラリア流行動態の将来予測に役立つことが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述の通り、ケニア西部の高地と、隣接するビクトリア湖周辺の平たん地における過去15-75年間にわたるマラリア患者数のデータを収集し、また、気象データ(月別降水量、平均気温、平均相対湿度)および「ダイポール現象」の指標となるインド洋の海面水温、海面高度などの海洋データを収集した。完成したデータベースを用いて、ダイポール指数、エルニーニョ指数、気象データ(月別降水量、平均気温、平均相対湿度)とマラリア患者数との関連についてWavelet解析を行なうことができ、一定の結果を得たことから、研究の達成度はおおむね順調と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、得られた結果を用いて、マラリア患者数の予測モデルを開発する。早期警報システムへの応用を検討するため、ケニアで関係者による検討会を開く。 また、研究成果を国内と国際学会で発表するとともに、国際誌に論文を投稿する。研究代表者はケニアを訪れ、共同研究者に結果を報告する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度、資料整理・研究補助のための謝金が予定より少なくて済んだため、次年度使用額が発生した。 旅費:研究代表者 研究打ち合わせ(長崎⇔ケニア1往復)および成果発表(国際学会) 謝金:資料整理・研究補助 その他:通信費、印刷複写費、論文校正、論文投稿料
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Research Products
(1 results)