2012 Fiscal Year Research-status Report
パッシブサンプラーによる水圏環境中放射性核種の迅速・高精度モニタリング手法の確立
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24651033
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Chiba Institute of Technology |
Principal Investigator |
亀田 豊 千葉工業大学, 工学部, 助教 (60397081)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中野 和典 日本大学, 工学部, 准教授 (30292519)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 国際情報交換 / 溶存態放射性セシウム / パッシブサンプラー / 選択制吸着ディスク |
Research Abstract |
河川水中の溶存態放射性セシウム放射能は、水生生物体内中の濃度予測に必要不可欠な情報であるが、国が指定している分析方法では労力や費用が極端に必要なため、事実上モニタリングは不可能となっている。そこで本研究ではセシウムを選択的に吸着するディスクを水中に沈め、浸漬期間における溶存態放射性セシウムの時間平均放射能を測定する「パッシブサンプリング手法」を確立し、実際の河川や湖沼への適用可能性を検討することを目的とした。 本年度は室内試験におけるディスクの吸着特性の把握、パッシブサンプラー資材の開発を行った。その結果、世界初の流速補正が可能な、水中溶存態放射性セシウムのパッシブサンプリング手法の確立に成功した。本手法は、水中の溶存態放射性セシウムを10mBq/L未満の検出下限値で測定できるほか、前処理を含む測定時間を一サンプルあたりわずか二時間程度で測定できることを、ゲルマニウム半導体検出器による現在の分析方法と制度及び分析結果を比較して明らかにした。 さらにこの方法を用いて関東地方を中心とした河川や湖沼水中の溶存態放射性セシウムを調査した結果、空間線量の高い地域を流域とする手賀沼や利根川等で数百mBq/Lであることが分かった。また、そのほかの河川でも数mBq/L未満から数十mBq/L検出された。環境省等のモニタリング調査ではほぼすべての地点で未検出(1Bq/L以下)と報告されているが、本手法ではこれらの地点でも精度高く分析ができ、水域においても他の河川よりも著しく放射能の高い河川が存在していることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
パッシブサンプラーによる微量汚染物質の分析方法はいくつかの有機化学物質や重金属で可能となっているが、水中溶存態放射性セシウムの微量汚染の分析方法は世界的にも確立されていなかった。そのため、水中の放射性セシウム分析法は世界的にも困難で労力のかかる高額分析として大きな問題となっている。しがし、本研究で初めて、世界的にも困難と思われた、簡易的、安全、低コストかつ従来の分析法以上の高精度を有する分析方法を確立することができた。さらに、その精度評価や流速による誤差を修正できる新しい分析結果評価方法の確立も行うことができた。さらに、実際の河川や湖沼への適用可能性も明らかにし、実際のモニタリングまで可能な段階まで研究を発展させることができた。さらに、すでにいくつかの国際学会で発表し、世界的にも著名な研究者から絶賛を受けるとともに、EUやロシアとの共同研究も行うこととなった。国内雑誌にもすでに論文執筆依頼を受け、提出している。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は本年度確立した分析手法を用いて、水生生物中の放射性セシウム放射能の高い湖沼や河川を対象に詳細モニタリングを複数年継続的に行い、溶存態放射性セシウムから水生生物中放射性セシウム放射能を推定するモデルを開発する。 詳細モニタリングはパッシブサンプリングを用いて月一回年12回溶存態放射能を測定する。湖沼内では溶存態のほか、底質のコアサンプリングによる鉛直方向放射能やセディメントトラップを用いた懸濁態放射性セシウムの沈降量の把握を行う。流入河川でも詳細モニタリングを行い、セシウム流出量に与える流域の土地利用特性や降雨量、土壌組成の影響を把握し、河川や湖沼水中の溶存態放射性セシウムの水環境中挙動の把握や長期シミュレーションモデルの開発に利用する。 モデル開発にはチェルノブイリ事故でモデルを開発したJim Smith教授(ポーツマス大学)と共同で研究を行う。開発モデルは日本の土壌特性や気候、土地利用特性を反映した日本版の環境動態シミュレーションモデルを目指す。モデル原型はEU版モデルを理論的基盤とし、日本の環境特性等にバリデーションする形でモデル開発を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度予算はすべて、詳細モニタリングの費用として使用する。内容としてはパッシブサンプリングで消耗品として利用する「選択性吸着ディスク」の購入、パッシブサンプリングホルダー及びケージの購入及び現場までの移動費を中心とし、そのほか論文の投稿関連の費用とする。
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Research Products
(6 results)