2012 Fiscal Year Research-status Report
多目的最適化アルゴリズムを用いた自然保護区の空間配置分析ツールの開発
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24651037
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
久保田 康裕 琉球大学, 理学部, 准教授 (50295234)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平尾 聡秀 東京大学, 農学生命科学研究科, 講師 (90598210)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 生物多様性 / 保護区 / 最適配置 |
Research Abstract |
本研究では「ノアの方舟問題」と呼ばれる、経済的制約の下で生物多様性の保全策を分析する多目的最適化手法を開発し、自然保護区の最適配置を提案する分析ツールを構築することを目的としている。モデルシステムとして日本の陸上生態系の生物多様性の空間分布と自然保護区の空間配置を取り上げる。開発する分析ツールは、以下に挙げる分析項目を実装する:1)現保護区でカバーされない種多様性ギャップの定量;2)現保護区網から漏れている種多様性を最小コストで保護区に組み込むための追加保護区の最適配置分析;3)異なる分類群の生物多様性の保全を包括的に最大化する保護区の空間配置分析。昨年度の研究実績は以下の通り。 1)日本産の生物種(樹木・シダ・ササタケ類・哺乳類・蝶・両生類・爬虫類)を対象に、分布情報を収集し、種ごとに分布域をGISソフトを用いてシェープファイル化した。また、シェープファイルをメッシュレベルのバイナリーデータに離散化するプログラム、それらを地図化するプログラムを開発した。 2)各省庁・各自治体が紙媒体でまとめている保護区の地図、国土交通省や文化庁が公開している自然公園等の国土数値情報を3次メッシュ単位とした分布域地図に離散化し、保護区の地理分布を可視化した。なお、保護区は生物種のハビタット保全に関する法的規制の強さに応じてランク化した:原生自然環境保全地域、国立・国定公園の特別保護地域、天然記念物、ラムサール条約指定地、世界自然遺産地域、第1種特別保護地域、第2種特別地域、第3種特別地域、都道府県自然環境保全地域、鳥獣保護区域、保安林、緑地保全地域など。 3)上述した生物分布と保護区分布の対応関係を分析した。具体的には、生物種の分布レンジに応じた保護面積の臨界点を設定し、現状の保護区における各種の保護区包含度を求めた。これにより、保護努力をより投資すべき種と地域を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
申請に先立った準備により、予定していた以上に研究が進捗している。基本となるデータセットは完成し、すでに解析結果が確定しつつあるので、今後はその成果を論文として発表していく計画である。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に作成したデータセットを用いて、最大被覆点配置アプローチによる保護区の最適配置分析プログラムを開発する。生物多様性の保全では、特定の分類群に偏ることなく様々な生物種をターゲットにする必要がある。よって、異なる分類群の生物多様性を、同時に最大化する保護区の配置が要求される。何らかの制約下で、複数の評価基準や複数の目的関数を最大化する場合、遺伝的アルゴリズムを用いた多目的最適化が有効になる。そこで、来年度の研究では、メッシュ毎の各分類群の種数を評価基準とし、二つの目的関数を作成する:1)保護区でカバーされる様々な分類群の生物種数を最大化する;2)保護区の数(∝保護区の周囲総延長)を最小化する(行政的管理コストの観点から保護区の数は少ない方が望ましいから)。そして、現状の保護区面積を生物多様性保全に投資できる行政的資源の制約と想定する。これにより最大被覆点配置の問題に帰着させ、現状の保護区設置コストの制限下において、最も少ない数の保護区で、かつ、保護区内でカバーする生物多様性を最大化する保護区の配置を、パレート最適解として分析する。以上の分析結果を基に論文執筆を行い、生物保全関係の専門誌に論文を投稿する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
データ解析を補助する研究員を雇用し、論文作成を効率的に進めれるようにする。
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