2012 Fiscal Year Research-status Report
放射線によるテロメア脆弱化を介した遅延性染色体組換えメカニズム
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24651051
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
児玉 靖司 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (00195744)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | テロメア脆弱化 / 染色体組換え / 放射線の生物影響 |
Research Abstract |
本研究の目的は、放射線被ばく子孫細胞でゲノム不安定性が生じるのは、被ばく染色体のテロメアが脆弱化することにより、テロメア/サブテロメア部位で染色体組換え頻度が上昇することに起因することを、再構成実験系で実証することである。そこで、平成24年度は、X線被ばくによるテロメア脆弱化を検出し、定量化する実験系の確立を目指した。テロメア反復配列を標的としたテロメアFISHを用いると、通常は1本の染色体上に4個のドット状のテロメアシグナルが検出される。テロメア構造に何らかの異常が生じた場合、シグナル増幅、またはシグナル消失が生じると予想される。また、ヒト染色体に比べるとマウス染色体のテロメアサイズは4~5倍長いことから、テロメアシグナルの検出がヒト染色体より容易である。そこで、ICRマウス胎児線維芽細胞を用い、X線被ばくによるテロメアシグナル異常を調べた。細胞周期G2期の細胞に1GyのX線を照射し、直後の分裂期でテロメアFISHによりテロメアシグナル異常を検出し、シグナル増幅、及び消失の染色体当たりの頻度を解析した。その結果、染色体当たりのシグナル増幅数は、自然では0.089±0.008であるのに対し、1Gy被ばくでは0.25±0.019であり、2.8倍増加した(p<0.001, カイ二乗検定)。また、染色体当たりのシグナル消失数は、自然では0.01±0.002であるのに対し、1Gy被ばくでは0.04±0.006であり、3.9倍増加した(p<0.001, カイ二乗検定)。本研究の結果は、放射線被ばくによってテロメア構造異常が生じることを示しており、この異常がテロメア脆弱化を引き起こす可能性を示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当該研究は、当初の予定よりも少し遅れているが、着実に進んでいる。予定より少し遅れているのは、テロメア脆弱化の指標として採用したテロメアFISHによるシグナル異常の検出法の安定化に時間を要したためである。当初は、ヒト線維芽細胞を用いて検出を試みたが、結果が安定しなかったために、テロメアサイズが長いマウス胎児線維芽細胞を用いて検出した。その結果、1GyのX線被ばくによってテロメアシグナル異常が有意に増加することが明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は以下のように取り組む。 (1)放射線によるテロメアシグナル異常誘発とテロメア脆弱化との関連性の解析 ①テロメアシグナル異常の線量依存性を調べる。②テロメアシグナル異常と染色体異常との関係を調べる。③被ばくテロメア部位における姉妹染色分体交換頻度を調べる。 (2)2本の被ばくヒト染色体を移入したマウス細胞の作成と染色体組み換えの解析①放射線を照射したヒト6番染色体と8番染色体を2本とも、被ばくしていないマウス細胞内に移入する。②移入されたマウス細胞での被ばくヒト染色体間組換えをFISHを用いて解析する。 (3)ヒト染色体間組換えに対するテロメア短縮、及びDNA複製ストレス負荷の効果の解析 ①テロメレース阻害剤処理によりテロメア短縮したヒト6番、及び8番染色体をマウス細胞に移入する。②テロメア短縮した被ばくヒト染色体間の組換えをFISHで解析する。③(2)で作成したヒト染色体を2本移入したマウス細胞の培地にアフィデイコリンを添加してDNA複製ストレス負荷をかける。④DNA複製ストレスの負荷が移入被ばくヒト染色体間の組換えに及ぼす影響をFISHで解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1.当該研究費が生じた状況 研究の進展が当初の予定よりも少し遅延したために、研究計画の一部を平成25年度にまわした。遅れていた染色体移入実験に用いる試薬購入のための研究費の一部を次年度に購入することにした。 2.翌年度以降に請求する研究費と合わせた使用計画 平成24年度の研究成果を踏まえて、平成25年度は染色体移入実験を最初に計画しているので、平成25年度の研究費と共に次年度使用額とした研究費もこれに充てる。
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Research Products
(9 results)