2013 Fiscal Year Annual Research Report
放射線によるテロメア脆弱化を介した遅延性染色体組換えメカニズム
Project/Area Number |
24651051
|
Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
児玉 靖司 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (00195744)
|
Keywords | 生物影響 / テロメア |
Research Abstract |
本年度は、染色体移入実験により、放射線による遅延性染色体組換えの促進効果について調べた。ヒト8番染色体を含有したマウスA9細胞にコルセミドを48時間処理して微小核を形成させ、最終的にポアサイズ3μmのポリカーボネートフィルターで微小核を精製した。この染色体を1本程度含んだ微小核に2 GyのX線を照射し、直ちにポリエチレングリコールを用いてマウスm5S細胞と融合し、貪食を利用して染色体を移入した。ヒト染色体が移入された細胞は、ブラスチシジンS耐性(BSr)で選択し、X線非照射染色体移入細胞を10種、また、2 Gy照射染色体移入細胞を10種、それぞれ分離した。X線被ばくにより生じた染色体損傷は、微小核内では修復されず、マウスm5S細胞に移入された後に修復されると想定される。そこで本研究は、その際にマウス染色体との遅延性染色体組換え頻度が上がる否かを、ヒト8番染色体特異的蛍光プローブを用いた染色体着色(WCP-FISH)法で調べた。X線非照射染色体移入100細胞当たりの平均遅延性染色体異常数は、1.2±1.2であったのに対し、2 Gy照射染色体移入100細胞当たりの平均異常数は、2.6±1.5であり、X線被ばくにより有意に異常頻度が上がることが明らかになった(p=0.0242, Mann-Whitney U-test)。検出された染色体異常には、被ばくヒト染色体自身の異常に加えて、無傷のマウス染色体との複雑な転座も含まれていた。本研究の結果は、放射線による染色体損傷の修復過程では、無傷の染色体との組換え現象が惹起されることを明確に示している。
|