2012 Fiscal Year Research-status Report
カドミウムが引き起こす新規機構による小胞体ストレス
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24651058
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
黄 基旭 東北大学, 薬学研究科(研究院), 講師 (00344680)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | カドミウム / 小胞体ストレス / 小胞体関連蛋白質分解系 |
Research Abstract |
本研究は、カドミウムによる小胞体ストレス誘導に関わる新規分子機構の解明を目的としている。これまでに、カドミウムによる小胞体ストレス誘導に小胞体内への特定蛋白質の過剰蓄積が関与している可能性を示唆する研究成果を得ている。小胞体関連蛋白質分解系(ERAD)に関与するFBXO6の発現抑制が細胞に高いカドミウム感受性を与え、細胞をカドミウムで処理するとBIPおよびCHOPのレベルが顕著に増加し、FBXO6の発現抑制によってこれらは更に増加した。これは、FBXO6の発現抑制によってERADの機能が低下したために、カドミウムによる小胞体ストレス誘導が更に亢進された可能性を示唆している。次に、カドミウムがERADの機能に与える影響を検討するために、NHKおよびTCRα(ERAD基質蛋白質)の細胞内レベルを調べた。その結果、カドミウムはこれら蛋白質のレベルを濃度依存的に増加させた。また、シクロヘキシミド存在下で、カドミウムは両ERAD基質の分解速度を遅延させた。さらに、MG132処理によって両蛋白質のレベルが顕著に増加したが、MG132存在下ではカドミウムによる両蛋白質のレベルの増加がほとんど認められなくなった。以上の結果より、カドミウムはERAD機能を抑制することによって小胞体ストレスを誘発している可能性が考えられる。一方、小胞体ストレス誘導剤であるdithiothreitol、thapsigarginおよびtunicamycinで細胞を処理してもNHKおよびTCRαのレベルはほとんど変動しなかった。このことから、NHKとTCRαの両方のレベルが上昇するという現象はカドミウムによって引き起こされる小胞体ストレスに特異的なものと考えられ、カドミウムはこれまでに知られていない新しいタイプの小胞体ストレス誘導剤であることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、ユビキチンリガーゼであるFBXO6が有する基質特異性を利用して、カドミウムによって引き起こされる小胞体ストレス誘導に関わる新規分子機構の解明を目指すものである。これまでの検討により、カドミウムはFBXO6が関与している小胞体関連蛋白質分解系を特異的に阻害することによって、小胞体ストレスを引き起こしていることが始めて明らかになった。本研究成果は、当初の研究目的を達成する上で非常に重要な知見であることから、当初の目標を向けて順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの検討により、カドミウムはFBXO6が関与している小胞体関連蛋白質分解系(ERAD)を特異的に阻害することによって、小胞体ストレスを引き起こしていることが始めて明らかになった。今後、カドミウムによるERAD阻害に関わる分子機構について詳細に検討する予定である。ERADは小胞体内で生じたミスフォールド蛋白質の分解系であり、以下の五つのステップで構成されている。ミスフォールドされた蛋白質は、①ユビキチン化酵素によってユビキチン化され、②VCP複合体によって小胞体から細胞質側へ引き出される。その後、③脱糖鎖酵素によって脱糖鎖され、④プロテアソームへリクルートされた後に、⑤プロテアソームによって分解される。そこで、カドミウムのERAD機能阻害作用に関わる分子機構を解明するために、カドミウムがERADの各ステップに与える影響を検討する。以上の検討によって、カドミウムによって引き起こされる小胞体ストレス誘導に関わる新規分子機構(ERAD阻害)を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり、平成25年度請求額を合わせて、平成25年度の研究遂行に使用する予定である。なお、予算額(繰り越し込み)1,504,690円を下記のように使用する。 物品費:1,054,690円(一般試薬:104,690円、遺伝子研究用試薬:150,000円、蛋白質研究用試薬:150,000円、各種キット:100,000円、受託DNA合成:100,000円、受託siRNA合成:150,000円、細胞培養関連試薬:300,000円) 旅費:200,000円(日本毒性学会(千葉;3泊4日):60,000円、The 28th Annual Meeting of KSOT(韓国ソウル;4泊5日)140,000円) 人件費:100,000円(外国語論文の校正:100,000円) その他:150,000円(研究成果投稿料:150,000円)
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