2012 Fiscal Year Research-status Report
胎児期血液脳関門の構築および機能に対する環境化学物質の影響の解析
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24651062
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
宮崎 航 熊本大学, 生命科学研究部, 助教 (90512278)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 環境化学物質 / 血液脳関門 |
Research Abstract |
本研究は、環境化学物質の周産期の血液脳関門(Blood-Brain Barrier: BBB)を容易に移行しうるか、また、環境化学物質が神経系細胞へ直接作用するだけでなく、BBBの構造・機能に変化を及ぼすことにより脳への影響が引き起こされる可能性があるかを検証するものである。本研究により、周産期BBBを構成する細胞への環境化学物質の作用機序の解析を進め、環境化学物質の新たな作用概念の創出を目指している。 平成24年度においては、ファーマコセル社のBBBキットを用い、BBB機能が構築されるまで、もしくは構築した後に段階的に用量を設定したダイオキシンを曝露し、BBBのバリアー機能について解析を行った。その結果、BBB機能が構築した後にダイオキシンを曝露した群は対象群と比較し、有意な変化は認められなかった。一方、BBB機能構築が行われると同時にダイオキシンを曝露したところ、用量依存的なBBBの機能低下が認められ、特に最も用量の高い群において有意な現象が認められた。またこの変化は曝露期間中から認められた。さらに、ダイオキシンがBBBを通過したか否かについて検証するため、上記BBBキットのアストロサイトからRNAを回収し定量的リアルタイムPCR法を用いてダイオキシン曝露により誘導される薬物代謝酵素CYP1A1, 1B1の発現を解析したところ、用量依存的な発現誘導が認められた。以上のことから、ダイオキシンがBBB機能構築時になんらかの変化を引き起こし、機能を低下させている可能性がある。また、ダイオキシンはBBBを通過し、BBB通過後に影響を及ぼしている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初、実験動物を用いた研究から進めていく予定であったが、その後に予定していたBBBキットを用いた研究を行った。BBBに対する環境化学物質の影響について、曝露によるBBB機能の変化を認められたことから、メカニズム解析や化学物質の作用点などについてもターゲットが絞ることができ、大きな成果であった。平成25年度においては、動物を用いた検証と作用機序の解明を進めていく。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに得られた結果からキット中の脳血管内皮細胞、周細胞、ギャップジャンクションの構造をそれぞれのマーカーを使って免疫染色し、BBBの構造に変化がないかを観察する。さらに実験動物を用い、ダイオキシンを対象曝露物質とし、生体におけるBBB機能と曝露影響について検証を行う。そして上記のBBB構造の確認についても実験動物にて行う。 一方、ダイオキシンのBBB通過が認められたことから、通過した用量について測定をおこなう。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度においては実験動物を使用した研究を行う予定であったが、先んじてin vitro研究を行った。そのため、平成24年度における研究費の一部を動物実験用の費用として次年度使用分とした。平成25年度において、この費用を用い、動物実験を行う。 また、平成24年度において得られた結果から解析が必要である対象が明らかであるため、対象となる細胞を用い、ダイオキシン曝露による変化について解析をおこなう。
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