2012 Fiscal Year Research-status Report
「水分と熱の並び流れ」原理の応用による国内産杉材の低温乾燥と環境負荷低減
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24651067
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
谷口 尚司 東北大学, 環境科学研究科, 教授 (00111253)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清和 研二 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (40261474)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 木材の乾燥 / 低温乾燥 / 乾燥による変形 / 林業再生 / CO2排出削減 |
Research Abstract |
平成24年度は、杉材の乾燥試験を温度勾配一定の条件下で行い、その結果の一部を木材内の水蒸気拡散モデルによって再現した。杉材の巨視的組織は大別すると中心部の赤身と周辺部の白太に分けられ、それぞれの含水率は赤身が90~160%、白太が30~50%であった。木材中の水分の移動方向を仮道管方向(L)と半径方向(R)に合わせ、赤身および白太の2種について下記の2つの乾燥方法を比較した。まず水分と熱の移動方向が逆の場合(Counter)で、これは通常の熱風乾燥と同じ条件であり、もう一つは水分と熱の移動方向が同じ場合(Parallel)で、本研究で注目する熱と水分の並び流れの条件である。これらの条件の乾燥速度を、低温部の温度を25℃、高温部の温度を80℃に固定して測定した。これにより熱移動と水分移動とが複雑に絡み合う乾燥現象を、水分移動のみに注目して解析できる。測定では、10時間の乾燥に伴う全含水率の経時変化と、乾燥後の水分移動方向への部分含水率分布を、それぞれ求めた。その結果、含水率が50%以上の条件で赤身・L・Counterの乾燥速度は、赤身・L・Parallelより数倍大きいが、乾燥が進むとその差は小さくなる。その他の条件では、CounterとParallelの乾燥速度の差は小さかった。また一般にL方向はR方向よりも乾燥速度は大きく、赤身と白太の乾燥速度の差は含水率による差より小さかった。部分含水率は、Counterの場合に乾燥面から遠い低温部ほど高く、初期含水率が高い条件では低音部の含水率は初期値よりも高くなった。一方、Parallelの場合には、乾燥面(低温面)と高温面の中間部でやや高くなる傾向を示した。このような部分含水率の位置による変化は、含水率が30%以下の白太・Lの条件で行われた水蒸気拡散モデルの計算結果によって良く説明することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
木材の部位(赤身と白太)および組織方向(仮道管方向(L)と半径方向(R))の各条件で、熱と水分の移動方向(CounterとParallel)をすべて組み合せて、それぞれの全含水率変化、部分含水率変化、および全含水率の経時変化を測定・整理した。さらに木材中の水分移動について、各位置の温度に対応する平衡水蒸気濃度の差を推進力とした拡散によって表現する乾燥モデルを構築し、初期含水率が30%程度の条件で測定結果を再現できることを得た。また、木材中の水分移動に大きな影響を及ぼすと思われる仮道管壁孔(ピット)を通しての空気の透過率の測定装置の製作を終え、2,3の条件で試験的な測定を行っている。これらの研究成果は当初予定した計画をすべて達成しており、一部は次年度の計画を前倒しで実施している。なお、本年度に得られた結果はそれぞれに新たな発見である。なお、当初期待していた熱と水分の並び流れの条件下で特に乾燥速度が大きくなる現象は未だ見出されてはおらず。低温乾燥の優位性については今後検討していきたい。以上のように平成24年度の達成度は当初計画以上に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)空気透過率の測定:平成24年度に製作した木材組織内の空気の透過率測定装置を用いて、赤身と白太、通気方向(L方向とR方向)のそれぞれの組合せについて、種々の温度と含水率の条件で空気の透過率を測定する。合わせて急速加熱法によってピットを強制的に開孔させた場合の透過率も測定する。これらの結果からピットの開孔率を推算する。また、1つのピット当りの空気の流通抵抗を数値シミュレーションによって評価し、その結果と実験で得た透過率との比較から、開孔ピットの個数密度を計算する。その値が乾燥条件によってどのように変化するかを調べることにより、低温でも速い乾燥速度が得られる条件を探索する。さらに顕微鏡観察により、赤身および白太の平均空隙率を求め、乾燥モデルに適用する。 (2)乾燥速度および変形量の測定:乾燥に伴う変形が生じる低含水率の条件で、平成24年度と同様の乾燥試験を行い、乾燥に伴う木材の変形量を測定する。そしてその結果が水分と熱の移動方向によって変化するか否かを検討する。 (3)乾燥の数学モデルの確立:前年度のモデルでは、水分の移動が温度差に伴う平衡水蒸気濃度の勾配による分子拡散で進行することを仮定した。実際にはこれらの他に、温度差による水蒸気圧力の勾配による水蒸気の強制移動機構や、毛細管力による自由水の移動機構も存在するはずである。これらの移動機構を乾燥モデルに組み込み、その計算結果を乾燥試験結果と比較検討することにより応用性に富む乾燥モデルを開発する。 (4)環境負荷の小さい乾燥法の探索:実際に普及している乾燥法について、操業条件の調査を行うとともに、乾燥速度および乾燥に要するエネルギー投入量を比較・検討する。そしてより環境負荷の小さい乾燥法について考察する。 以上の研究成果は、日本木材学会で研究発表するとともに、国内シンポジウムを開催して一般に公開する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額(B-A)の531,290円について、その使用計画を記す。この使用額は全額を研究代表者が下記の使途に使用する予定である。 研究費使用計画 物品費 旅費 人件費・謝金 その他 計 232,190 100,000 100,000 100,000 532,190 物品費は、次年度に実施予定の、乾燥に伴う木材の変形測定装置製作用材料費および前年度に明らかになった装置の不具合の改善のために用いるとともに、ガラス器具や薬品などの購入に使用する。その他については、木材乾燥に関する国内シンポジウムを開催するための経費に使用する予定である。
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Research Products
(1 results)