2012 Fiscal Year Research-status Report
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24651070
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
原野 安土 群馬大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90238204)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 潜熱蓄熱材 / 無機水和物 / 流動性 |
Research Abstract |
比較的低い温度の熱エネルギーをそのまま暖房や給湯に有効利用できれば、飛躍的な省エネルギーが実現できる。しかし低温熱エネルギーの発生と消費は空間的および時間的な隔たりが大きく、これらの排熱を有効利用するためには流動性のある蓄熱材が必要不可欠である。本研究では蓄熱材として無機水和物に注目し、特に流動性を有する潜熱蓄熱材の開発を目的として実験を行う。 平成24年度は電気力学天秤を用いてMg(NO3)2・6H2Oの微粒子の潮解固化特性の把握を中心に行った。Mg(NO3)2の液滴は湿度を下げていくと、相変化を起こし水和物の固体になるが、さらに湿度を下げると自分の含有している水和物の水により再度自己潮解を起こすことがわかった。さらにラマン分光を用いると液体から固体、固体から液体への相転移が観測できた。これらの相変化は固体を途中に挟むが、液体→液体への相転移が湿度をコントロールすることで可能であり、流動性を有する新規蓄熱材の可能性を見出した。 次に流動性を確認するためアクリルパイプにMg(NO3)2・6H2Oを封入して、乾燥窒素を流して低湿度場での液化実験を行った。しかし、このような方法では相変化を起こす湿度まで下がりきらないため、Mg(NO3)2・6H2Oの液化は観察できなかった。そこでアクリルパイプにドライヤーを当て試料の融点まで熱して液状にした。加熱直後の試料は流動したが、温度が下がると流動しなくなった。また指でMg(NO3)2の液体を触ってみたところ、べたべたとした水あめのような液体であり、かなり粘性が高いことがわかった。 以上の実験からMg(NO3)2・6H2Oの低湿度での液体状態を流動化させることは非常に難しく、粘性をコントロールする工夫が必要であることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当初予定していたMg2(NO3)2の湿度変化による液相→固相→液相の転移は観測できたが、低湿度でのMg2(NO3)2の液体の流動性が極めて低く、また湿度が少しでも上昇すると表面に6水和物の固体が生成してしまい、液体の性質を著しく妨げてしまう。その他に自己潮解性を有するMgSO4についても同じ実験を行ったが、低湿度での液体の粘性はMg(NO3)2と同様に高いものであった。 実験結果より湿度を調整して液相→固相→液相の相変化を利用する流動性蓄熱材の可能性は低く、今後の実験の計画を見直す必要があると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
潜熱蓄熱材のみで流動性を持たせることはかなり困難を伴うため、平成25年度は固体水和物と液体が混ざり合ったスラリーでの流動化を検討することとする。無機水和物の高濃度で高分散スラリーが実現可能になれば、流動性潜熱蓄熱材として利用可能となる。高分散させるためには、かなり小さな粒子の懸濁液にする必要があり、さらに熱の出力密度を高めるためにも高濃度のスラリーが求められる。選択した無機物はNa2SO4であり、33℃以下で十水和物を形成しNa2SO4・10H2Oとなる性質がある。このNa2SO4・10H2Oを選択した理由は、潜熱量が大きく(融解熱254J/g)、固定型の潜熱蓄熱材として実際に使われているためである。また、Na2SO4は配管や装置の金属を腐食する恐れがなく、安価な点も大きな理由となっている。Na2SO4の水溶液からの水和物の形成および温度変化を測定することで蓄熱材の評価を行い、固化後の液体の流動性を評価することで、流動性潜熱蓄熱材の可能性を探ることを目的として実験を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
申請時にはマイクロサーモグラフィー(Apiste FSV-1200)を購入予定だったが、予算の残金では購入が難しいため、平成25年度はスラリー懸濁液内の粒子の観察に光学顕微鏡、蓄熱材の性能評価に温度測定装置の購入に主な予算を使用する。特に高額物品の購入の予定はない。
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