2012 Fiscal Year Research-status Report
脱塩素化集積物における代謝ネットワーク構造の解明とモデル系の構築
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24651075
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
二又 裕之 静岡大学, 工学部, 准教授 (50335105)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | Dehalococcoides / Dechlorination / Bioremediation |
Research Abstract |
トリクロロエテン(TCE)完全脱塩素化集積物の異なる継代培養物(5代目および6代目)を用いて、16S rRNA遺伝子を標的としたクローン解析をバクテリアおよびアーキアについて実施した。バクテリアについては、継代培養物間において大きな違いは認められなかった。一方、アーキアに関しては違いが観察された。すなわち5代目では水素資化性メタン生成アーキアが約82%を占めたのに対して、6代目では酢酸資化性メタン生成アーキアが79%を占めていた。 5代目培養物では、TCEは速やかにエテンに脱塩素化された。脱塩素化中はメタンの発生は抑制気味であったのに対して、脱塩素化終了後に急激にメタンが発生した。また、このメタン発生と培地中の酢酸の減少は互いに関連していた。一方で、6代目では、最初からメタンの急激な発生と酢酸の消費、および脱塩素化の遅延が観察された。 一般的に、脱塩素化細菌であるDehalococcoidesは水素を巡りメタン生成アーキアと競合すると言われている。しかし、本解析結果から、むしろ嫌気的酢酸酸化細菌と酢酸資化性メタン生成アーキアとが、酢酸を巡る競合にある事が示唆された。更には、Dehalococcoidesと水素資化性メタン生成アーキア間には、水素を巡る競合は生じない事が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
脱塩素化活性の異なる集積培養物の挙動を、微生物群集構造の解析により説明する事ができた点は高く評価できる。また、クローンライブラリー解析結果と一致する菌株を分離し、この遺伝子を持つ微生物がクエン酸を利用して水素を発生している事を明らかとした。 また、これまで一般的に考えられていたDehalococcoidesとメタン生成アーキアとの競合が、嫌気的酢酸酸化細菌と酢酸資化性メタン生成アーキアに依存するのではないかという新しい仮説を得た事も評価に値する。 当初の予定であった、メタゲノムやメタトランスクリプトーム解析を実施せずとも今後の研究展開には問題なく取り組める事から、おおむね順調に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
水素資化性および酢酸資化性メタン生成アーキアの分離を試みる。これまでにも試みて来たが、別の研究において予想できなかった方法からメタン生成微生物の分離ができたことから、その手法を用いる予定である。また、同時にDehalococcoidesの分離にも挑戦する。これには、絶対嫌気性微生物の取得も可能で操作も比較的容易な6 wells plate法を用いて実施する。分離菌株の同定および生理学的解析を実施した後、分離菌株を組み合わせた脱塩素化系の構築を行い、複数の微生物の役割と連携を明らかにし、効果的な脱塩素化技術に資す知見を得る。また、分離菌株の特性を反映しながらシミュレーション実験についても進めていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当無し
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Research Products
(3 results)