2012 Fiscal Year Research-status Report
触媒反応における酸化物格子酸素の役割と動的挙動の解明
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24651077
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
羽田 政明 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70344140)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 環境負荷低減技術 / 触媒反応 / 触媒機能解析 / 触媒調製化学 |
Research Abstract |
触媒反応において酸化物格子酸素が関与することを示唆する知見を得るため、酸素貯蔵材(Oxygen Storage Component)として自動車排ガス浄化触媒に利用されている酸化セリウム(CeO2)を酸化ジルコニウム(ZrO2)に分散担持した触媒を調製し、さらに触媒活性種である白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)を担持した触媒のNO-CO-C3H6-O2反応の活性を評価した。本研究では反応ガス条件を酸素過剰および酸素不足の条件を周期的に変動させて評価を行った。その結果、Pt、Pd、Rhを担持したいずれの触媒においても、酸素貯蔵材であるCeO2を添加していない場合、酸素不足の条件ではCOやC3H6の酸化活性が大きく低下した。一方、CeO2を添加した触媒では、酸素不足の条件であっても、酸素過剰条件と比較して、COやC3H6の酸化活性に顕著な違いは見られなかった。これは、酸素不足条件では、酸素貯蔵材であるCeO2から格子酸素が放出されて、COやC3H6の酸化に関与していることを示唆する結果である。そこで、CO酸化反応におけるCeO2格子酸素の挙動を調べるため、貴金属(Pt、Pd、Rh)を担持していないCeO2-ZrO2について16O2から18O2に反応ガスを切り替えた際の生成物であるCO2の同位体分布を観測した。その結果、18O2に切り替えた直後においても主な生成物はC16O2であり、反応時間とともにC16O2が減少し、代わりにC16O18Oの生成量が増加する傾向が見られた。CeO2-ZrO2のみであっても反応速度は遅いものの、格子酸素がCO酸化反応に直接関与していることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
酸化物表面での格子酸素の反応性と触媒の変化の同時観察から、触媒反応における格子酸素の役割と動的挙動の解明を目指した研究を実施している。研究計画に基づき、(1) 酸素貯蔵材に担持した貴金属触媒の活性評価から格子酸素の関与の可能性を明らかにし、(2) 安定同位体(18O2)を用いた反応解析より担体酸化物中の格子酸素が関与していることを明らかにしており、研究の進捗はおおむね順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
触媒反応における酸化物格子酸素の役割と動的挙動の解明し、高活性な触媒開発につながる設計指針を提案することを目指している。そのためには触媒活性種である貴金属を担持した触媒上での格子酸素の反応性を明らかにするための検討を継続して実施するとともに、高活性な触媒開発の設計指針提案につながるナノ粒子触媒の合成と評価を検討する。さらに反応条件における触媒の構造や吸着の動的変化に関する検討を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度、ガス流量制御装置の購入を予定していたが、既存の装置を改造することにより計画していた研究を実施することができた。当該研究において、酸化物粒子表面の格子酸素の反応性が極めて高いことを見出しており、格子酸素の反応性をさらに高め、より高性能な環境浄化触媒開発につながる設計指針を得るために、表面の露出割合が高いナノ粒子触媒を合成するための装置を購入する予定である。当該装置による触媒合成のための原材料および触媒評価に必要な同位体ガスを購入する予定である。
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