2012 Fiscal Year Research-status Report
微生物機能を利用した水環境からのバナジウム回収技術の開発
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24651079
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
惣田 訓 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30322176)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池 道彦 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40222856)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | バナジウム / 微生物 / レアメタル / 元素戦略 |
Research Abstract |
バナジウム回収工場で採集した底泥、生物膜および土壌サンプルからのバナジウム還元菌の集積培養を試みた。サンプルA~Eを4~10 mMのV(V)を含む液体培地に接種したところ、好気集積系A、B、嫌気集積系A、B、Eにおいてバナジウムの還元が確認された。好気集積系ではV(V)濃度が減少しても水溶性V濃度は一定であった。一方、嫌気集積系ではV(V)濃度の減少に伴い、水溶性V濃度も減少した。植え継ぎ後、十分に時間が経過すると、嫌気集積系のみならず好気集積系の培養液中の水溶性V濃度が減少していた。水相から消失したバナジウムは、嫌気集積系では沈殿に含まれ、好気集積系では、菌体内に蓄積されているか、酸に不溶な化学形態で沈殿していることが示唆された。以上より、少なくとも嫌気条件では、水相からバナジウムを回収することが可能であることが判明した。 集積培養系から、形状の異なる18個のコロニーを得た。これらの菌株の15株が6日間で1 mMのV(V)を50%以上還元した。嫌気培養系では8株がV(V)の全量を還元し、多くが培養開始1日以内に還元を開始していた。一方、好気培養系では6株が70~90%のV(V)を還元し、培養開始2日以降に還元が始まるものが多かった。分離した18株の中では、AA1株が最も速く、36時間以内にV(V)の全量を還元し、続いて2株が2日間、2株が3日間、2株が4日間、1株が6日間でV(V)の全量を還元した。嫌気培養系の8株は、十分に高いバナジウム還元能力を有しているといえる。一方、還元率は低いものの、好気培養系によるV(V)の還元は生物学的に興味深いものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第1目標であったバナジウム回収微生物の集積培養系の構築には、成功した。一方、第 2目標であった集積培養系からのバナジウム回収微生物の純粋分離と特徴づけでは、単独でバナジウムを回収することができる微生物の取得には至らなかった。しかし、バナジウム還元菌としては稀であるグラム陽性菌としてMicrobacterium属のOB1株を分離した。OB1株は初期菌体量が高濃度の系においては、初期菌体量が少ない増殖を伴う系とは傾向が異なり、好気条件では4時間以内、嫌気条件では12時間以内に1 mMのV(V)のほぼ全量を還元した。培養条件によっては、バナジウム回収ができる可能性がある。
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Strategy for Future Research Activity |
産業廃水・地下水・海水を微生物源とし、集積培養系の構築を継続する。 バナジウム回収微生物の純粋分離を継続して試みる。また、細菌の中にはコロニーを形成しないものもあり、他の細菌と共生関係にあって純粋分離ができない場合も想定される。そこで、分離した細菌の16SrRNA遺伝子の配列を解析し、集積培養系のT-RFLP解析の結果と比較し、集積培養系のバナジウム回収微生物が、純粋分離できたのかどうかを確認する。純粋分離が困難な場合は、集積培養系(混合系)として、バナジウム濃度や水温などの要因が、バナジウムの還元・回収に及ぼす影響を評価する。また、バナジウム還元細菌として報告されているS. oneidensis MR-1は、ATCC標準菌株であるため、既に入手してある。これを比較対象とし、集積培養系や、純粋分離菌の特徴を明らかとする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
バナジウムおよびその分析試薬、培養のためのプラスチック器具などの物品費に600千円を使用する。学会発表の旅費などに200千円を使用する。化学分析の人件費・謝金で100千円を使用する。英文校正や学会参加費などのその他費目に100千円を使用する。
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Research Products
(1 results)