2012 Fiscal Year Research-status Report
その場接触分解によるバイオオイル高効率アップグレーディング法の開発と機構解明
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24651080
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
則永 行庸 九州大学, 先導物質化学研究所, 准教授 (00312679)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | バイオマス / 再生可能資源 / ゼオライト / 固体酸触媒 / 接触改質 / 化学原料 / 高効率転換 / 反応器設計 |
Research Abstract |
急速熱分解によるバイオオイル製造は、草本・木質系バイオマスの液体燃料への転換技術の中でも、簡便かつ高エネルギー変換効率という優位性を持つ。本研究では、バイオオイルの“これまでにない”すなわち“外部からの水素や化成品の投入を必要としない”アップグレーディング法の開発に挑戦する。申請者は、バイオマス粒子の急速熱分解生成物をその場で(冷却・凝縮することなく)酸触媒と接触させることで、高選択的にベンゼンが生成する接触分解反応系をごく最近見つけた。改質特性に及ぼす温度、接触時間、触媒種等の影響の調査と機構解明を管状反応器とGCあるいはGC/MSを直結した装置3台を駆使して系統的かつ迅速に行う。さらに粒子連続供給型反応器を用いて、触媒劣化特性や反応機構について検討し、本アップグレーディング技術実用化のためのproof-of-conceptを得ることを目指す。本年度得られた主な成果を以下に記す。 1.リグノセルロース系バイオマスおよびその構成成分を急速熱分解して得られる揮発成分のin-situ接触改質特性を、揮発成分とチャーを分離して追跡可能な二段反応器を独自に開発した。 2.5種のゼオライト触媒を用いてスギ急速熱分解生成物のその場接触改質特性を調査したところ、接触改質による炭化水素化合物収率および芳香族化合物収率(Yaroma)は、触媒種によらず無触媒改質よりも明らかに高い事を示した。さらに、HZSM-5を用いた場合、Yaromaは最大の26%に達することを明らかにし、本反応系によるバイオマスの迅速かつ高選択的な芳香族化合物への転換が可能であることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
リグノセルロース系バイオマスの急速熱分解において生成する揮発成分を冷却して得られるバイオオイルは石油系オイルと比較して劣質であり、種々のアップグレーディング法が検討されている。なかでも、セルロースと固体酸触媒(HZSM-5)の粒子混合物の急速加熱によって、原料炭素モル基準で約30%もの高収率で芳香族化合物が生成したという報告が注目されている。芳香環を持たないセルロースから芳香族炭化水素への高選択的転換における反応機構に関心が集まっているが、既報で用いられた手法の場合、接触時間の制御が困難であるばかりでなく、系中に共存する炭化物(チャー)と揮発成分との相互作用を無視できないため、実験結果に基づく反応機構の推定が困難であった。加えて、本反応系に関して実バイオマスを用いた検討は十分になされていない。 本年度においては、リグノセルロース系バイオマスおよびその構成成分を急速熱分解して得られる揮発成分のin-situ接触改質特性を、揮発成分とチャーを分離して追跡可能な二段反応器を独自に開発し、芳香族化合物生成反応機構について詳細に検討することができたことから、計画通り順調に進捗しているものと判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
バイオマス熱分解生成物は極めて多くの化学種から構成され、これらの化学種から特定の生成物にいたる反応経路を同定することは極めてチャレンジングである。今後、系統的な実験による現象論的アプローチを基盤としながら、超多成分混合複雑反応系を対象に申請者が取り組んでいる素反応データベースを活用した網羅的反応速度モデリング法も活用してこの難題に挑戦していく。分子レベルでの反応機構の解明は、実用化に向けた触媒開発や反応システムの最適化の加速につながる。さらに、改質バイオオイルの組成や質を制御するための反応条件設定に関する確実な指針を得ることにもつながる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(6 results)