2012 Fiscal Year Research-status Report
環境共生長寿命住宅の実現へ向けたバイオアコースティクスの利用
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24651081
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
大鶴 徹 大分大学, 工学部, 教授 (30152193)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡本 則子 有明工業高等専門学校, その他部局等, 助教 (00452912)
富来 礼次 大分大学, 工学部, 准教授 (20420648)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 環境共生住宅 / シロアリ / デジタル信号処理 / 振動・音響信号 / バイオ・アコースティクス |
Research Abstract |
本研究は、日本における代表的な木材劣化生物である地下シロアリを対象に「振動・音響信号による地下シロアリの摂食活性の変化の検討」「地下シロアリの摂食活性を制御する振動・音響信号の開発」の2つの検討を行い、環境への影響が少ない振動・音響信号を用いた木材劣化の防止、ひいては環境共生長寿命住宅の実現を目指す。本年度は研究実施計画に記載した4項目に対し、それぞれ以下の成果が得られた。 1. 実験環境の構築:研究連携者および京都大学生存圏研究所の協力を仰ぎながら、イエシロアリの摂食活性が高く、かつ振動・音響信号の付加が可能な実験環境を構築した。 2. 実験環境に関する検証:1.で構築した実験環境を検証するため、イエシロアリの生存実験を行った結果、実験開始後2週間の生存率が80%以上であった。 3. 摂食活動で発生する振動・音響信号の収集・分析:長さの異なる4種のスギ材中におけるイエシロアリの摂食活動で生じる振動・音響信号の収集に成功した。得られた信号に,短時間FFTを施し,周波数特性の時間変化を観察した。その結果、それぞれの材で複数のピーク周波数が見られ、この周波数を乾材シロアリに対する先行研究結果と比較したところ、イエシロアリの結果は乾材シロアリの結果に比べ、材のサイズによる変化の割合が小さかった。 4. 木材に付加する振動・音響信号の種類とイエシロアリの摂食活性との関係の検討:上記1.で構築された実験環境において、3.で採取された信号とピンクノイズを木材に付加し、2週間の摂食量を比較した。その結果、ピンクノイズを使用した場合に、2つの材の摂食量に有意差が生じた。さらに、それぞれの信号の量を変化させたところ、付加する信号の量が大きいほど摂食活性が低下する傾向が見られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、環境負荷の少ない木造住宅の長寿命化を目指し、日本における代表的な木材劣化生物である地下シロアリを対象に、振動・音響信号を用いた木材劣化の防止手法の開発を目的としている。平成24年度は、まず、実験を行うための環境の構築として、振動・音響信号の付加が可能で、2週間後の生存率80%以上の実験環境の構築を行った。続いて、地下シロアリが感知可能な振動・音響振動の目安をえるために、地下シロアリが木材を摂食する際に発生する信号の採取に成功した。さらに、地下シロアリが摂食する木材に付加する振動・音響信号の種類および量を変化させて実験を行ったところ、地下シロアリの摂食活性が低下する場合が見られた。来年度以降は、構築された実験環境をもとに、地下シロアリの摂食活性が低下する場合について、その条件や普遍性を明らかにする。以上、平成24年度の研究実施計画に記載された内容が実施できており、次年度以降の実施計画内容も実施可能となっているため、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度の成果を踏まえ、以下の計画で研究を実施する予定である。 ・摂食活動以外の振動・音響信号の収集・分析:兵アリから危険を知らせる際に発生されると考えられている振動・音響信号等、地下シロアリの挙動と関連すると考えられる、摂食活動以外の振動・音響信号の収集・分析を試みる。 ・木材に付与する振動・音響信号の種類とイエシロアリの摂食活性との関係の検討(継続):前年度4.の研究結果をふまえ、周波数・時間特性および大きさを変化させた5種以上の信号を用い、信号を付加しない木材と信号を付加した木材の摂食活性を比較する。これらの結果から、地下シロアリを制御できる可能性の高い3種程度の振動・音響信号を抽出する。なお、研究が当初計画通りに進まない場合は、適宜研究連携者、Lai教授および京都大学生存圏研究所との議論を行い、研究計画を修正する。また、必要に応じて研究テーマの取捨選択を行う。具体的には、木材に付加する振動・音響信号の種類とイエシロアリの摂食活性との関係の検討および、地下シロアリの摂食活性を制御する振動・音響信号の開発を優先的に実施する。 ・ 地下シロアリの摂食活性を制御する振動・音響信号の普遍性検討:前項で抽出された振動・音響信号を、寸法や種類の異なる木材に付加し、信号を付与しない木材と付与した木材のイエシロアリの摂食活性を比較する。また、イエシロアリ以外の地下シロアリとして、日本全国に分布するヤマトシロアリに対し同様の実験を行い、その効果を比較する。 ・振動・音響信号の発生手法と地下シロアリの摂食活性との関係の検討:前項の成果とあわせ、木材への振動・音響信号の付加方法に関し、3種以上試行し、地下シロアリの摂食活性の変化を観察する。その結果より、環境への影響やコスト面も考慮に入れ、最も効果的な信号の付与手法を提案する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
データ収集およびデータ処理を加速させるため、振動加速度ピックアップとチャージアンプの購入とともに、ノートPCの購入を予定している。また、継続して実験を行うため、実験用木材の購入も予定している。さらに、実験を継続的に行うため、実験補助学生の謝金も計上している。 情報収集および研究の打合せのため、京都大学生存圏研究所への出張を予定しているとともに、成果発表のための学会参加用旅費および参加費の使用を予定している。
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Research Products
(3 results)