2013 Fiscal Year Research-status Report
漆コーティングによる環境負荷が低く強度の高い素焼き製品製造技術の開発
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24651083
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Research Institution | Hachinohe Institute of Technology |
Principal Investigator |
水沼 和夫 八戸工業大学, 感性デザイン学部, 教授 (20118201)
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Keywords | 素焼漆器 / 持続可能性 |
Research Abstract |
漆塗装の仕上げ技術と、試験片の冷凍・解凍による崩壊実験を中心に研究を行った。漆塗装の仕上げの基礎となる「色漆」調合練り合わせについて岩手県八幡平市「漆工技術センター」にて技術研修を受けた。また、会津若松市鈴善漆器店にて「蒔絵」および呂色仕上げの技法について指導を受けた。それに基づく色漆の発色、塗装、磨きなどの実験を行った。これは部分的に現在も継続中である。これらにより、色漆を用いた多彩で現代的な漆器の制作に可能性が開かれつつある。 素焼漆器の地球環境保全性に関する重要な実験として、800℃~1100℃までの5段階の温度で焼いた試験片の冷・解凍実験を三種類の粘土について行った。落下試験の強度で優れていた特練半磁器土、信楽陶土、信楽赤味土を選び、漆を10回塗装したもの(前年度の実験で用いた試験片の破片)を水の入った容器に入れ、フリーザへの出し入れによって冷凍・解凍(フリーザーの最大冷凍温度-20度、フリーザーから取り出し後は常温の室内に10時間ほど放置)を繰り返した結果、粘土の種類にかかわりなく、800℃、950℃焼成では冷解凍20回ではっきりとした崩壊を示し、40回では1,100℃焼成の試験片でも崩壊を開始した。 1100℃焼成の場合は、特練半磁器土を除くすべての粘土で釉掛け本焼き(1230℃)以上の落下強度を示している(前年度の実験データ)が、高温焼成ゆえの多孔性の低下による塗装漆面の剥離の危険性も指摘し得るところであるため、素焼温度1100℃で十分に耐久性のある漆器が作製可能かどうかは疑わしい。これについては「焼き付け」や「すり漆」など、他の塗装法による効果の違いをみる試みの一環として行った、早い段階での「磨き」を入れた重ね塗りによって、強度に大きな効果のあることが示唆されているので、1100℃などの高温焼成に頼らない方法によるより高い強度補強を目標としている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
漆塗り試験片の冷解凍実験で予想以上の結果が得られ「素焼漆器」の地球環境保全性が改めて確認された。 試作品制作の面では、色漆の練りや調整法、呂色仕上げの際の漆の使い分けの詳細など経験的知識の会得に手間取り、試行錯誤を繰り返す結果となった。 試作品制作自体は進みつつあるが、年度内に予定ししていた石膏型による制作には至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
漆塗装の仕上げ技術について実験を続けながら安定した漆塗装行程を策定し、成形技術の面でも石膏型などを用いた方法による制作例を準備する。 最終年度であるため、「試作品」のほかに「実験結果のデータを示したパネル」「<素焼漆器>の地球環境保全性を示すパネル」「縄文時代の漆塗土器などの例にみられる我が国の漆文化の歴史を示すパネル」などを展示する研究成果報告会を学外の複数の会場で実施する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
漆の購入はウェブサイトからの通信購入に頼っており、物品価格以外に「送料」「振込料」などを見込むことになるが、「~万円以上無料」などのため、不要になるケースもある。この場合も、初めて取引をした業者でしたが、送料無しでした。 漆およびその関連物品購入等に充てる予定。
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Research Products
(1 results)