2012 Fiscal Year Research-status Report
電解硫酸の光励起に基づく電子産業用有機フッ素化合物の分解・無害化反応システム
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24651085
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
堀 久男 神奈川大学, 理学部, 教授 (50357951)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 有機フッ素化合物 / 電解硫酸 / 光反応 / 分解 |
Research Abstract |
電解硫酸とは硫酸を電気分解して得られる試薬で、最近になって半導体製造のレジスト剥離工程に用いられ始めた新しい反応剤である。電解硫酸はペルオキソ二硫酸イオンやペルオキソ一硫酸イオン、過酸化水素等の酸化性化学種を含んでいると言われているが、詳細は不明である。ペルオキソ二硫酸イオンは紫外光照射により酸化力が極めて高い硫酸イオンラジカルを生成し、様々な難分解物質を分解できることが知られている。そこで今年度は環境残留性が高い有機フッ素化合物の代表であるトリフルオロ酢酸(TFA)を、電解硫酸を加えて紫外光を照射することでフッ化物イオンまで分解・無機化できるかどうか調べた。 使用した電解硫酸(希釈液)中のペルオキソ二硫酸イオン濃度をATR-IR分光法で測定した。また過酸化水素の濃度もポルフィリン法で測定した。光反応はTFAと電解硫酸を含む水溶液を反応装置に入れ、酸素ガスを導入後、水銀・キセノンランプから220 nm~460 nmの紫外・可視光を照射することで行った。反応後の水中のフッ化物イオンおよびトリフルオロ酢酸はそれぞれイオンクロマトグラフィーおよびイオン排除クロマトグラフィー(IEC)で、ガス相中の二酸化炭素は熱電導度検出ガスクロマトグラフィーで分析した。 当初、IECにおいて、反応液をそのまま純水で希釈して測定したところ、TFAのピークが電解硫酸中に高濃度に含まれている硫酸イオン等のピークと重なり、精密な定量が困難であった。そこで反応液をNaOHでアルカリ性にした後、硫酸除去カラムを通して液中の硫酸イオンを除去した。その結果、TFAの正確な定量が可能となり、この光反応でTFAはフッ化物イオンと二酸化炭素まで分解できることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
電解硫酸中のペルオキソ二硫酸イオンおよび過酸化水素の定量法を確立した。さらに電解硫酸溶液を用いて環境残留性が高い有機フッ素化合物の代表であるトリフルオロ酢酸をフッ化物イオンと二酸化炭素まで完全に光分解させることに成功した。この経緯から研究はおおむね順調に進捗していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
課題(1) 電解硫酸の構成成分の解明 電解硫酸中にはペルオキソ二硫酸や過酸化水素の他にペルオキソ一硫酸も含まれており、その濃度は時間とともに変化すると言われているが、詳細は不明である。そこでラマン分光法等によりその濃度を解明する。 課題(2)電解硫酸を用いた有機フッ素化合物の分解反応 電解硫酸を用いたトリフルオロ酢酸の光分解反応について、反応時間依存性や量子収率等を測定する。また、電解硫酸の構成成分である、ペルオキソ二硫酸、ペルオキソ一硫酸、過酸化水素をそれぞれ単独で使用した場合と比較して、分解反応にどの化学種が効果的に寄与しているのか解明する。さらにはトリフルオロ酢酸以外の有機フッ素化合物の分解も行う。 課題(3)光励起によるラジカル生成能の評価 レーザー過渡吸収分光法により励起した電解硫酸溶液から発生する硫酸イオンラジカル、ペルオキソ一硫酸ラジカル等の定量分析を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
25年度に請求する予定の110万円と24年度繰越した69万円の合計額179万円の使用内訳は物品費109万円、旅費20万円、依頼分析費用40万円、英文校閲10万円を予定している。物品費は試薬・ガス類、光化学用実験器具類、分析用消耗品(HPLCカラム等)である。
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