2013 Fiscal Year Research-status Report
電解硫酸の光励起に基づく電子産業用有機フッ素化合物の分解・無害化反応システム
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24651085
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
堀 久男 神奈川大学, 理学部, 教授 (50357951)
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Keywords | 有機フッ素化合物 / 電解硫酸 / 光反応 / 分解 |
Research Abstract |
電解硫酸とは硫酸を電気分解して得られる試薬で、電子産業界においてレジストや金属等の除去工程で用いられている新しい反応剤である。電解硫酸は単一な化学物質ではなく、ペルオキソ二硫酸イオンやペルオキソ一硫酸イオン、さらには過酸化水素といった酸化性化学種から構成されていると言われているが、その組成は経時変化もあるため不明な点が多い。 25年度は電解硫酸の酸化種成分を解明すると共に、昨年度に引き続き、電解硫酸を光励起させて水中のトリフルオロ酢酸(TFA、CF3COOH)をフッ化物イオンおよび二酸化炭素まで分解できるかどうか調べた。また、TFAの定量に際して妨害となる成分の除去も試みた。電解硫酸中のペルオキソ二硫酸イオン、ペルオキソ一硫酸イオンおよび過酸化水素の定量は、ATR-IR分光法、顕微レーザーラマン分光法、チタン・ポルフィリン法でそれぞれ可能であった。TFAの分解反応はTFAと電解硫酸を含む水溶液を酸素雰囲気中で撹拌しながら水銀キセノンランプから紫外・可視光を照射することで行った。その結果、TFAをフッ化物イオンと二酸化炭素まで分解させることができた。TFAの定量も前処理として硫酸イオン除去カラムを使用することで精度が向上した。電解硫酸の代わりに電解硫酸中のペルオキソ二硫酸イオンと同濃度のペルオキソ二硫酸カリウムを用いた反応や、電解硫酸中の過酸化水素と同濃度の過酸化水素水を用いた反応も行ったところ、TFAは電解硫酸を用いた場合に最も効果的に分解することが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述のように電解硫酸の酸化種成分を解明し、TFAをフッ化物イオンと二酸化炭素まで分解させることができたため、順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
電解硫酸の酸化種の解明とTFAの分解が達成できたので次年度はこの反応の量子収率を測定する。さらに電解硫酸を用いてTFA以外の有機フッ素化合物の分解も行う。電解硫酸はTFAと反応することで還元されて硫酸イオンとなるが、これをさらに電解硫酸に戻して循環利用するシステムの構築も検討する。これらの結果を踏まえて特許を出願する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
分析の外注を予定していたが自前でできるように工夫したこと、老朽化した高速液体クロマトグラフや光反応装置が壊れて修理する事態を想定していたが、壊れなかったことが主な原因である。 次年度への繰り越し額131万円と請求額110万円の合計額241万円の使用内訳は、物品費171万円、旅費20万円、依頼分析費用40万円、英文校閲10万円を予定している。物品費は試薬・ガス類、光化学用実験器具類、分析用消耗品(イオンクロマトカラム等)である。
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