2014 Fiscal Year Research-status Report
電解硫酸の光励起に基づく電子産業用有機フッ素化合物の分解・無害化反応システム
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24651085
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
堀 久男 神奈川大学, 理学部, 教授 (50357951)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 有機フッ素化合物 / 電解硫酸 / 光反応 / 分解 |
Outline of Annual Research Achievements |
電解硫酸とは硫酸を電気分解して得られる試薬で、電子産業界においてレジストや金属等の除去工程で用いられている新しい反応剤である。電解硫酸は単一な化学物質ではなく、ペルオキソ二硫酸イオンやペルオキソ一硫酸イオン、さらには過酸化水素といった酸化 性化学種から構成されていると言われているが、その組成は経時変化もあるため不明な点が多い。前年度までに電解硫酸中のペルオキソ二硫酸イオン、ペルオキソ一硫酸イオンおよび過酸化水素の定量をATR-IR分光法、顕微レーザーラマン分光法、チタン・ポルフィリン法で行い組成を解明すると共に、電解硫酸を光励起させて水中のトリフルオロ酢酸(TFA、CF3COOH)をフッ化物イオンおよび二酸化炭素まで分解できるかどうか調べていた。26年度は分解対象物質をTFAよりも分子量が高いペンタフルオロプロピオン酸(C2F5COOH)およびヘプタフルオロブタン酸(C3F7COOH)まで拡大し、電解硫酸の存在によりこれらの難分解性有機フッ素化合物を光分解できるかどうか調べた。その結果、これらの物質をフッ化物イオンと二酸化炭素まで分解させることができた。イオン排除クロマトグラフィーによりこれらの物質の分解はペルフルオロアルキル基が短いカルボン酸を経由して進行することが分かった。電解硫酸の代わりに電解硫酸中のペルオキソ二硫酸イオンと同濃度のペルオキソ二硫酸カリウムを用いた反応を行ったところ、電解硫酸を用いた場合よりも反応性は低かった。従ってこれらの物質は電解硫酸を用いることでより効果的に分解できることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画の通り電解硫酸の酸化種成分を解明し、TFAをはじめとする各種有機フッ素化合物をフッ化物イオンと二酸化炭素まで分解させることができた。関連する特許出願も行い、学会発表も行ったため順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
電解硫酸の組成と反応生成物の分布の関係を詳細に調べ、電解硫酸が有機フッ素化合物を効果的に光酸化分解する機構の詳細を明らかにした上で論文発表を行いたい。
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Causes of Carryover |
26年度に、電解硫酸を用いて炭素数3以上の有機フッ素化合物の実験を行い、論文発表する予定であったが、反応生成物の分布が使用する電解硫酸の組成に大きく依存することが分かった。そこで計画を変更し、各種有機フッ素化合物の分解反応について、電解硫酸の組成と反応生成物の分布の関係を研究期間を延長して詳細に調べ、論文発表することに したため未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
各種有機フッ素化合物の分解反応について、電解硫酸の組成と反応生成物の分布との関係を調べる実験にかかる経費と成果を発表するための経費(論文校閲および学会等での発表に必要な旅費)に使用する。
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