2012 Fiscal Year Research-status Report
実糖蜜廃液中有機物を利用する微生物燃料電池の開発と残渣廃液中の着色成分の分解
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24651086
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Research Institution | Osaka Sangyo University |
Principal Investigator |
尾崎 博明 大阪産業大学, 工学部, 教授 (40135520)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高浪 龍平 大阪産業大学, 工学部, その他 (00440933)
谷口 省吾 大阪産業大学, 工学部, その他 (40425054)
濱崎 竜英 大阪産業大学, 人間環境学部, 准教授 (50340617)
RABINDRA Giri 大阪産業大学, 大学共同利用機関等の部局等, その他 (70568493)
藤長 愛一郎 大阪産業大学, 工学部, 准教授 (40455150)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 微生物燃料電池 / プロトン透過膜 / 発生電流 / 糖蜜廃液 / 未利用有機物 / 色度 / メラノイジン / バイオエタノール |
Research Abstract |
バイオマスからのエネルギー回収の1方法として、サトウキビなど由来の糖蜜を利用するバイオエタノール生産が行われている。一方、残渣として多量の有機物と着色成分を主体とする糖蜜廃液が排出される。本研究では、糖蜜廃液中の未利用有機物を利用する微生物燃料電池を開発するとともに、残渣中の着色成分等を処理する新システムを構築する。24年度の研究では糖蜜廃液の質的特性を知るとともに、酵素電池を改良したプロトタイプとなる微生物燃料電池を開発し、その基本性能について以下の知見を得た。 糖蜜廃液について、下水試験方法に準拠して成分分析を行ったところ、BOD:170,000mg/L、COD:303,000mg/L、全窒素:45,000mg/L、全リン:47,000mg/L、色度:256,000mg/L、pH:4.9の極めて高濃度の有機物が含まれることがわかった。糖蜜廃液はUASB処理される場合があり、別の実験によるとBODの約95%、CODの約60%が除去されるが、処理後でも極めて高濃度な有機成分が残留する。また、色度が極めて高く、メラノイジンと推定される高分子物質が存在しCOD源となっていると推定された。 また、超好熱菌由来のプロリン脱水素酵素を用いるプロリン電池の構成について検討を行う一方で、糖蜜廃液の利用を念頭に置いた微生物燃料電池について検討した。二槽型水溶液セルを使用し、アノード側に河川水、園芸土、および腐葉土を入れ、カソード側に水道水を入れ曝気を行った。カソードとアノードの間をプロトン透過膜で仕切り電極に炭素繊維を用いて電流の経時変化を調べたところ、電流は次第に増加し、40日目には92μAに達してさらに上昇を続けた。一方、CODは2000mg/Lから100mg/Lまで低下した。発生電流はまだ低いものであるが、有機物を利用しつつ電流が徐々に高くなっており、基本装置の作成を行い得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
バイオマスからのエネルギー回収の一環として、微生物燃料電池の開発が有力視されており、バイオエタノール精製後の糖蜜廃液がその基質として有望であると考えられる。本研究では、その質的特性を把握するため、BOD、CODなどの有機物指標や色度などの基本的な特性をまず把握し、同廃液は極めて高濃度の有機性廃液であり、UASB処理後でも多くの有機物が残留することを明らかにした。有機物の分子量分布については、非常に分子量の大きい高分子から低分子まで広範囲にわたるため検討途中であるが、色度除去も本研究の最終的な検討項目であるために、酵素による高分子物質の分解について予備的に検討したところ、分子量500と1200あたりに原液中にはみられない新たなピークがみられた。また、原液中に分子量1000~20000のピークがみられなかったため、それ以上の高分子物質が存在すると推定された。このように、糖蜜廃液の質的把握については、ほぼ予定通りの成果が得られた。 また、実施計画に沿って、微生物燃料電池のプロトタイプの開発を行い、糖類などで構成される模擬廃液を用いて性能を試験した。一定の起電力が発生するとともに、有機物濃度も経時的に減少したことから、微生物燃料電池の構成は成しえた。しかし、生じた電流はまだ小さいものであり、今後、装置の改良に取り組む必要がある。なお、微生物燃料電池の基質源として糖蜜廃液を用いる試験については、当初から25年度の研究項目としている。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度までに糖蜜廃液の質的特性がほぼ明らかになったが、色度成分の詳細や特に高分子量の有機物分子量分布については検討途中となった。本研究では、微生物燃料電池に糖蜜廃液を供した後の残余の有機性廃液の処理をも視野に入れていることから、上記成分についてさらに検討を進める。また、糖蜜廃液中の難分解性物質の分解に適用可能な酵素を産生する白色腐朽菌やシロツメクサ、ホースラディッシュ等の選択、生成酵素の活性とその着色物質分解への有効性について検討する。 また、前年度に微生物燃料電池のプロトタイプとなる装置を構成したが、まだ起電力が小さいため、微生物の選択の馴養を含め、メディエーターとなる物質の添加や、一方で開発中の酵素電池の知見を合わせて電流、電力への変換効率、安定したより高い起電力を得るための装置改良についてさらに検討する。その上で、実糖蜜廃液を燃料とする微生物燃料電池試験を行う。 最終的には、糖蜜廃液中有機物の微生物燃料電池による電気的変換効率(エネルギー回収効率)と残渣廃液中の特に色度成分の除去効率をそれぞれ評価したうえで、本研究課題で開発した手法のエネルギー変換技術と環境負荷低減技術としての有意性を評価する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
糖蜜廃液およびそのUASB処理液などの質的特性についてさらに検討するとともに、開発した微生物燃料電池における基質消費特性、また、残渣及びその白色腐朽菌や分解酵素による処理液中の成分分析を行う必要がある。このための消耗品費として、試薬類、ガラス器具やプラスチック器具、分析用ガス等を購入する費用が必要である。また、研究成果を発表するための旅費を要する。さらに、蜜廃液やその処理液の分析等においては化学廃液が残り、その他の費用として廃液処理費を要する。設備備品に相当する物品は計上しない。
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Research Products
(8 results)