2012 Fiscal Year Research-status Report
被災地の微生物で被災地を救え-がれきを材料としたバイオプロセスの構築を目指して-
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24651093
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
岩淵 範之 日本大学, 生物資源科学部, 講師 (90328708)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松藤 寛 日本大学, 生物資源科学部, 准教授 (70287605)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 低分子リグニン / 有機蛍光物質 / バイオプロセス / 海洋細菌 / バイオリファイナリー / Pseudomonas |
Research Abstract |
東日本大震災以降、被災地沿岸の海水の微生物群集構造は、土砂やがれきの流入等により、それ以前と比較すると大幅に変化しており、陸上由来と予想される微生物群が表層海水中に土着化しつつあると予想される。今回、被災地沿岸の海水の微生物群集構造を検討したところ、震災前後で微生物群集構造が大きく変化していることを見出した。 申請者は、このことに注目し、木質系バイオマスであるリグニンやその前駆体などを用いて、被災地沿岸の海水を菌源とし、基質の代謝・変換などを指標に各種スクリーニングを行った結果、例えば、海水に個体のシリングアルデヒド(SYAL)を添加した集積培養系から、SYALを出発物質として、水溶性の黒色色素や耐熱性の蛍光物質など産業応用性の高いと考えられるいくつかの物質を同時生産する菌株および複合培養系などを取得した。 本研究では、これらの(複合)微生物系を利用し、木質系バイオマスから高付加価値物質を抽出・創生するためのバイオプロセスの構築に必要な基礎的基盤技術の確立を目的として、上記観点のスクリーニングから得られたPseudomonas sp. ITH-SA-1株の水溶性の黒色色素や耐熱性の蛍光物質などの化学構造、合成メカニズムなどを検討した。また、海水を微生物源としてリグニン(lgn)、SYAL、バニリン(vnl)、パラヒドロキシベンズアルデヒド(PBH)などを添加した集積培養系を構築し、新たなスクリーニングを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Pseudomonas sp. ITH-SA-1は、上述した着眼点で着手した研究の中で、シリングアルデヒド(SYAL)を出発物質として、水溶性の黒色色素を生産する微生物としてスクリーニングされた株であり、本黒色色素には、耐熱性蛍光物質等の産業利用価値が高いと想定される物質が含まれていることから、これらの化学構造分析を行った。 まず初めに、培養液中の中間代謝産物について検討した。培養上清を各種溶媒抽出、カラムクロマトグラフィー等を繰り返して精製し、分取HPLCにて黒色、蛍光並びに主要生成物を単離し、MS、NMR、元素分析等を用いて化学構造解析を行った。その結果、添加したSYALはシリンガ酸、3-メチルガリック酸を経由して重合されているものと示唆された。蛍光活性を確認したところ、中間代謝産物ではなく、重合体のピークに活性が確認されたことから、蛍光物質は重合物であると推測された。 一方で、海水を微生物源としてリグニン(lgn)、SYAL、バニリン(vnl)、パラヒドロキシベンズアルデヒド(PBH)などを添加した集積培養系を構築し、新たなスクリーニングを行った。無機塩培地、および完全培地に上記化合物を各種濃度で添加し、集積培養を行った。複合微生物群衆構造の変化をDGGE等でモニターしながら、これらの物質を分解、変換、重合できる菌株の単離を試みた。その結果、新たに30株ほどの上記活性を有する候補株が単離された。続いて、それぞれの菌株を純化し、16S rDNAの配列により分類を行った。また、培養上清を採取し、蛍光活性などを確認した。その結果、Pseudomonas sp. ITH-SA-1よりも強力な蛍光活性を有する菌株をいくつか単離した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度の研究では、Pseudomonas sp. ITH-SA-1株の黒色色素、蛍光物質について化学構造分析においては、、GPC分析などにより分子量を明らかにするとともに、熱処理等による分解後、構成成分構造を検討していく。また、構造決定に成功した後には、試料濃度や反応時間を変更し、各成分の消長を経時的に追跡し、構造的知見による整合性経路の検討を行う。また、本項目とは別に生化学的な生合成経路のアプローチにも着手し、そこで得られた情報は随時構造決定に取り入れていく。 一方、スクリーニングについては、引き続き新たな菌株を求めて同様に行っていき、また、得られた解析候補株については、Pseudomonas sp. ITH-SA-1株において確立された解析法を用いて順次検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究において、Pseudomonas sp. ITH-SA-1株の生産する水溶性黒色色素および有機蛍光物質の化学分析に着手した段階で、HPLC分析に必要なカラムなどが耐久期限直前であったため、年度内での購入を視野に入れつつ研究を進めてきた。しかし、今年度末までの間に当該カラムなどの分析スペックが落ちなかったため、買い替えの時期が延期された。 今年度の繰り越し予算は、次年度のHPLCカラムなどの購入に充てる予定である。
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Research Products
(3 results)