2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24651095
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Research Institution | Sendai National College of Technology |
Principal Investigator |
遠藤 智明 仙台高等専門学校, その他部局等, 教授 (60369915)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | リチウム内包フラーレン / γ-シクロデキストリン / アンモニア / 窒素 / 包接化合物 / フラーレン |
Research Abstract |
リチウム内包フラーレン([Li+@C60])とγ-シクロデキストリンとの包接化合物の合成を行い、1H-NMRにより、リチウム内包フラーレン包接γ-シクロデキストリンの構造に由来すると考えられるピークが検出できた。実験に利用できる[Li+@C60]の量が、数ミリグラムと限られるため、包接化合物を単離・精製するまでにはいたらなかった。 そこで[Li+@C60]を大量に得るために、プラズマ照射法によって得られたフラーレン(C60)と[Li+@C60]とのクラスターから、[Li@C60]を単離精製するプロセスの改良に取り組んだ。これまでの知見では、クラスター中のリチウム内包フラーレンを同定する手法が知られてなかったが、二硫化炭素によって洗浄したクラスター残差を、7Li-固体NMR(400 MHz)で観測することにより、フラーレンに外接しているリチウムと内包されたリチウムが、それぞれ0.4ppmと、-16.0ppm(LiCl基準)とケミカルシフトの違いとして観測されることが判明した。さらに、Li核間の2次元のNOESYスペクトルから、リチウム核間の相互作用を観測することができた。 クラスターから[Li@C60]を精製する際には、酸化剤を用いてクラスター構造を破壊し、[Li+@C60]を、[Li+@C60]・PF6の塩の形で得ている。酸化剤の処理した物質を7Li-NMRを測定することによって、酸化剤で処理した後では、Li核を観測するために、クラスターで観測するより長い緩和時間が設定する必要があることが判明した。 現在、これらの実験結果を活用することにより、[Li+@C60]を容易に単離する手法が確立されつつある。新たな[Li+@C60]の単離精製プロトコルの確認実験と単離されたリチウム内包フラーレンの機器分析による確認研究を継続している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
リチウム内包フラーレンの原料価格が、研究開始時期には下がることが予想されていたが、最近まで従来の価格が維持されてきたため、H24年度の研究においては、リチウム内包フラーレンを合成に大量に使用できなかった。このためマイクロモル単位での実験となり、1H-NMRで包接化合物と考えられるピークを検出するところまでしか確認することができなかった。実験計画では、今回新たに合成したリチウム内包γ-シクロデキストリン包接化合物を触媒としたアンモニアの生成を確認するまでを24年度の課題としたが、アンモニアの生成の確認まではいたらなかった。しかし、H24年度の研究により、リチウム内包フラーレンの取り扱いや化合物に関する知見がまし、これまでは質量スペクトルのみにたよっていたリチウム内包フラーレンの確認を、7L1-固体NMRにより正確に捕捉することが可能になった。この分析手段を用いて、プラズマ照射法によって得られたフラーレンとリチウム内包フラーレンのクラスターからリチウム内包フラーレンを単離精製する新たなプロトコルが確立しつつある。これによりH25年度は大量のリチウム内包フラーレンを使用して研究を加速させたい。 H25年度の研究計画では、今回の一連の研究が新規であるため、結果のでるごとに知的財産権獲得のための特許出願を行っていく計画を立てたが、実際には、先に述べたリチウム内包フラーレンの実験に使用できる量が少ないことから、リチウム内包フラーレン包接γ―シクロデキストリンを単離精製するところまでいたらず、そのため特許出願のために必要なデータが得られていない。先に述べた新たなプロトコルの確立により、大量のリチウム内包フラーレンが使用できるようになれば、構造決定の研究も進展すると考えられるので、現在準備中の明細書を完成させ、知的財産権の獲得も行っていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
今後のリチウム内包フラーレンの研究環境を改善する意味も含めて、プラズマ照射法によって得られたフラーレンとリチウム内包フラーレンのクラスターから、リチウム内包フラーレンを単離精製するプロトコルを確立する。今回の研究で確立したプロトコルにより、リチウム内包フラーレンを大量に単離精製し、研究試薬を過不足なく使用できる研究環境を作り、さらに、新たなプロセスで精製されたリチウム内包フラーレンを用いて、リチウム内包フラーレン包接γ-シクロデキストリンの合成法の検討を加速する。溶媒を用いた反応とモルタル反応を用いた包接化合物の2種類の合成方法を検討する。その後、包接化合物の単離精製を行い、包接化合物の正確な分子構造の決定を行う。構造を決定すると同時に、包接化合物の物理化学的なデータをそろえ、今後の研究の方向性を導くための基礎データとする。 次に、構造の決定したリチウム内包フラーレン包接γーシクロデキストリンを用いて、窒素よりアンモニアを生成するプロセルの検討に入る 検討項目としては、①窒素量と触媒量、②反応に有効な光の波長(特に太陽光を意識した紫外領域、近赤外領域での検討、③反応系の温度、④亜ジチオン酸ナトリウムの添加量、⑤亜ジチオン酸ナトリウムに代わる塩基の検討等を進めていく。残りの期間が残り少ないためプロセスの最適条件の検討に着手し、将来の展開に備えて、収率を向上させるのに有効な因子を見出すところまでの検討を行いたいと考えている。最終的に最適な反応条件の決定までを行うことは困難と思われるが、最低限アンモニアの生成を確認し、ここでも今後の研究への方向性を見出す知見を得たいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
リチウム内包フラーレンの原料(リチウム内包フラーレンとフラーレンのクラスター、リチウム内包フラーレンのPF6塩)の購入を行い、リチウム内包フラーレン包接γ-シクロデキストリンの合成法の検討を加速する。 窒素ガスの発生装置を導入し、窒素ガスの供給を容易にする。窒素ガスは窒素ガスよりアンモニアを生成するための原料として連続運転でのアンモニア発生を検討するのと同時に、リチウム内包フラーレンの化学処理過程での窒素雰囲気化での化合物の取り扱いを行うために使用する。今年度は別予算で、グローブボックスの導入が決定していることもあり、グローブボックス内のパージする装置としても使用し、脱酸素、脱水状態での取扱いを可能にする。これによって、さらによい取扱い条件での検討が可能となり、合成、アンモニアの精製確認に有効であると考えている。 また窒素発生装置は、別予算で購入予定のグローブボックスと合わせ、本研究期間が満了したのちも、本研究の継続に使用することは無論であるが、本研究以外の教育研究、学生の実験に有効に活用していくことが可能であり、将来にわたって有効な装置であると確信している。 残りの研究費は、試薬、ガラス器具、実験器具等の購入を行う。
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Research Products
(4 results)