2013 Fiscal Year Research-status Report
マイクロバンチング不安定性の起源を探る電子ビームの縦方向位相空間の直接観測
Project/Area Number |
24651096
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
濱 広幸 東北大学, 電子光理学研究センター, 教授 (70198795)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
原 徹 独立行政法人理化学研究所, 先端ビームチーム, チームリーダー (00280727)
渡川 和晃 独立行政法人理化学研究所, 先端ビームチーム, 先任研究員 (00342816)
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Keywords | マイクロバンチング不安定性 / 縦方向位相空間分布 / チェレンコフ光 / 非線形反射鏡 / 4f収束システム |
Research Abstract |
本研究は、電子バンチ内の電子分布の揺らぎが自らのコヒーレント放射によって増幅されるとされている、マイクロバンチング不安定性の起源を実験的に明らかにすることを目的として、入射器ビームの縦方向位相空間の電子分布の直接観測手法を確立することを目的としている。一般に電子銃から引き出される電子ビームのエネルギーは、直流型熱陰極電子銃では500keV以下、熱陰極高周波電子銃では2~3MeVである。光陰極を用いる高周波電子銃では5MeV程度の高エネルギーであるが、3MeV以下程度のエネルギーの場合、電子の速度は光速に比べて有為に遅い。この特性を活かした縦方向電子位相君間分布を直接観測するシステムが、本研究における開発目標である このシステムは真空中に置かれた屈折率の小さいエアロジェルフィルムを電子ビームが通過する際放出するチェレンコフ光を測定する。電子の速度が光速に達していない場合、チェレンコフ光の放出角は速度に強く依存するため、光の放出角度と観測時間を同時計測することによって、電子ビームの縦方向位相空間を知る事ができる。本研究ではリアルタイム的に観測が可能であるように、連続的な放出角で放たれるチェレンコフ光を直線上に収束して、放出角度を位置情報に転換し、この直線収束像をストリークカメラで観測するものである。チェレンコフ角度を直線化するために、独自に考案したTurtle-Backミラー(亀甲羅鏡)と命名した非線形反射鏡を用いるが、この鏡面設計および光輸送方式を綿密に行なった。 亀甲羅鏡は大ざっぱな研磨が可能であることは工学メーカーとの議論で分かったが、その面精度およびラフネスについては本年度においては確認することが出来なかったが、4f収束システムを採用したストリークカメラまでの改良後の輸送系はビームトレース計算の結果非常に良い分解能を持ちうる事が分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年度に、チェレンコフ光観測システムの分解能劣化について大きな問題を発見し、そのため計画進行が遅れた。しかしながら、新たな発想でデザインした4f光輸送システムが非常に良い分解能(運動量分解能1.2keV/c、時間分解能0.74ps)を持ちうる事を見いだし、高い性能を期待できる事が分かった。亀甲羅鏡の形状設計を終えて試作品を製造できたことから、観測システムのオフラインではあるが、性能確認テストを近々実施できる事となった。
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Strategy for Future Research Activity |
亀甲羅鏡の試作品はすでに購入しており、現在卓上での4f収束システムを構築中である。亀甲羅鏡の表面研磨状態によるラフネスが分解能に与える影響は大きいと考えられているので、表面状態の測定と実際の空間分機能の間の相関が計算どおりであるかを検証するための実験を行なう。光源は簡便なHe-Neレーザーを用い、円上のスリットによってチェレンコフ光を模造する。この性能調査実験をできるだけ早く終え、亀甲羅鏡のラフネスの上限値を明確にして、実機を製作する。また真空チャンバーおよびエアロジェルホルダー等を製作し、年度内に実際の電子銃からの電子ビーム測定試験実験を遂行する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度に構築予定であったチェレンコフ光測定装置が、精密な分解能評価によって深刻な脆弱性を持っている事が判明し、本年度はこれの改良デザイン作業に終始した。結果的には極めて優れた性能が期待できる測定装置として設計することができたが、このためテスト機を構築する時間が極めて限られてしまった。しかしながら、構成機器のパーツの一部は本年度で収集できたため、次年度で当歩目標の研究成果達成を目指してた研究活動を行う事が可能となった。 テストシステムはほぼ完成したため、性能試験に必要な光学系(反射鏡、スリット、フィルター等で、約650千円)を購入するとともに、実機実験のための直線導入器(約250千円)および光り取り出し窓付(約200千円)の真空槽を製作する(約300千円)。性能試験はH26年8月までに終え、ビーム実験を10月に開始し、一定成果を年度内に得る予定である。また、本研究での成果発表および有識者との意見交換のための旅費として経費計上する(約250千円)。
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