2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24651103
|
Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
窪寺 昌一 宮崎大学, 工学部, 教授 (00264359)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | 真空紫外光源 / 希ガスダイマー / 光励起 / 二体衝突 |
Research Abstract |
現在、主に使われている固体レーザーは可視域から近赤外域で発振するものが多く,波長変換技術を用いてその発振波長域を紫外域まで拡張している.また、レーザー生成プラズマを用いるX線レーザーやX線自由電子レーザーも開発が進んでおり,生体工学等への応用に供する光源として期待されている.しかしながら、紫外域とX線の波長域の中間に位置する真空紫外域における応用可能なレーザーはArFレーザー(波長193 nm)やF2レーザー(波長157 nm)があるにすぎず、レーザー発振波長の空白域となっている.本研究ではこの真空紫外域で発振するレーザー媒質である希ガスに注目した.これを超高圧にすることにより常温でも平衡状態で増加する希ガスダイマーを生成する.この希ガスダイマーの真空紫外分光を行い,励起,発光のメカニズムを解明し,マイクロレーザーの実現に挑戦する. 常温・超高圧下での平衡状態でクリプトンダイマーを生成し,これを分光するためにレーザー生成アルゴンプラズマ広帯域真空紫外光源の高出力化,高安定化を行った.気体中で発生するレーザー生成プラズマの安定度は集光系で決まるレイリー長と集光強度で決まる.長いレイリー長では離散的なプラズマ発生となり,またその発生確率は統計的であり,結果として安定度は低下する.高開口比レンズの使用により,広帯域真空紫外光強度の安定化がはかれた. 超高圧希ガス(クリプトン,キセノン)中の2体衝突によるダイマー生成反応の平衡定数を理論的に求め,室温でのダイマー存在確率が圧力とともに著しく向上することを確認した.また,超高圧希ガス中でプラズマを生成した場合の比較的高温(3000 K程度)の条件下においてもダイマーは存在しうることが理論的に明らかになった.これらの結果を基に希ガスダイマー経由の希ガスエキシマ生成について研究を進める.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は,常温・超高圧下での平衡状態でクリプトンダイマーを生成し,これを分光するためにレーザー生成アルゴンプラズマ広帯域真空紫外光源の高出力化,高安定化を行った.気体中で発生するレーザー生成プラズマの安定度は集光系で決まるレイリー長と集光強度で決まる.長いレイリー長では離散的なプラズマ発生となり,またその発生確率は統計的であり,結果として安定度は低下する.高開口比レンズの使用により,広帯域真空紫外光強度の安定化がはかれた. 超高圧希ガス(クリプトン,キセノン)中の2体衝突によるダイマー生成反応の平衡定数を理論的に求め,室温でのダイマー存在確率が圧力とともに著しく向上することを確認した.また,超高圧希ガス中でプラズマを生成した場合の比較的高温(3000 K程度)の条件下においてもダイマーは存在しうることが理論的に明らかになった.これらの結果を基に希ガスダイマー経由の希ガスエキシマ生成について研究を進める.
|
Strategy for Future Research Activity |
初年度に行った分光光源の高強度化,高安定化により,希ガスダイマーの吸収・発光分光を行う.クリプトンの場合にはダイマーの励起エネルギーはクリプトン原子の励起エネルギーにほぼ準じている.これらはクリプトンの第一共鳴準位に相当することから波長はおよそ124 nmである.この励起を行うためにアルゴンエキシマランプ(波長126 nm,帯域幅10 nm)を用いる.基底状態のポテンシャルの最小値のところに存在するクリプトンダイマーをアルゴンエキシマランプによりエキシマ状態まで光励起する.その点でのポテンシャル曲線のわずかな傾きより,励起状態はエキシマ状態へと移行する.エキシマ状態での一重項,三重項間の混合によりエキシマ状態から解離的な自由状態へ真空紫外光(波長147 nm)を放射しながら遷移する.直ちに解離した基底状態は超高圧下ではポテンシャルの最小値に再びある程度たまることから常に被励起状態が供給されることとなる. アルゴンエキシマランプを励起光源としてクリプトンダイマーの励起を行い,波長147 nmでのクリプトンエキシマの発光遷移からクリプトンダイマー密度を見積もる.アルゴンエキシマランプの遷移波長は126 nm(帯域10nm)であり、クリプトン原子の共鳴遷移波長は124 nmであることから,超高圧状態でのクリプトンダイマーの準共鳴励起が実現し、エキシマ遷移である147 nmの発光が観測できることを予測している.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今後の研究計画を遂行するために,真空紫外光源として縦型アルゴンエキシマランプを備品として購入する予定である.本来初年度に購入予定であったが,レーザー生成プラズマ広帯域真空紫外光源の高出力化,高安定化を実験的に実証するにあたり,優先順位を下げたものである.消耗品としては真空紫外用光学素子(主にフッ化マグネシウム結晶),希ガス等に研究費を使用する予定である.
|