2012 Fiscal Year Research-status Report
イオンビームによる細胞へのドーピングと細胞機能修飾
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24651106
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
品田 賢宏 独立行政法人産業技術総合研究所, ナノエレクトロニクス研究部門, 研究部門付 (30329099)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | ドーピング / イオン注入 / イオンビーム / 細胞機能修飾 |
Research Abstract |
本研究では、申請代表者らが半導体物性制御用に世界に先駆けて開発した単一イオン注入技術(イオンを1 個ずつ数10nm の精度で注入可能)を応用して、ドーパント原子を生きた細胞に注入し、細胞機能修飾を試みている。具体的には、慢性関節リウマチ治療に効果が知られているAu、抗がん剤シスプラチンに含まれるPtヒントを得て、細胞へのドーピングを実施、生きた細胞に対する注入効果の検証に着手した。細胞機能修飾を通じて生命現象を解明し、半導体用に開発されたイオン注入法の細胞生物学分野への新展開を図り、創薬分野に資することを研究目的としている。H24年度に研究実施計画で予定した「研究項目1 生きた細胞へのドーピング効果の検証」に取り組んだ。 研究項目1 生きた細胞へのドーピング効果の検証 生きたがん細胞(HeLa)を凍結させた状態でAuイオンを注入し、細胞活性の評価を通じてドーピング効果を検証した。細胞活性評価には、アデノシン三リン酸(ATP)アッセイ(CellTiter-Glo, Promega)を用いた。がん細胞1個当たり1000~10000個のAuイオンを注入すると、未注入の細胞と比べて平均して20~40%ほどATP量が向上し、細胞が活性化していることが確認された。イオン注入法による細胞活性の変化を観測した、恐らく初の成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
半導体物性制御用に開発されたイオン注入法を応用して、ドーパント原子を生きた細胞に注入し、細胞機能の修飾を可能にする手法を確立し、概ね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
生きた細胞へのドーピング効果を検証できたことを受け、評価法を多様化することによって細胞機能修飾メカニズムの解明が課題である。また、イオンが直接細胞に導入されていることを検証しなければならない。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H25年度は、引き続き研究項目1に取り組む他、予定通り「研究項目2 細胞レベルでの治療に有用な元素の探索」および「研究項目3 ナノ毒性学(Nanotoxicology)への展開」に着手する。 研究項目2 細胞レベルでの治療に有用な元素の探索 制がん剤の1つである白金製剤の原型はシスプラシンで、その発見は白金電極を用いた細菌培養で電流を流すと最近の発育が阻害される知見に基づいている。この様にシンプルな実験系での発見が創薬に重要な発見をもたらしている。注入イオン種および細胞種を拡大して治療に有用な元素を探索する。制ガン剤に含まれるPtイオンを生きたがん細胞への注入を試みる。がん細胞増殖阻害もしくは死滅に有用な元素を探索する。 研究項目3 ナノ毒性学(Nanotoxicology)への展開 一方、当然のことながら、毒性を有する元素の発見を伴う。近年、ナノテクノロジー、ナノ材料研究の進展に伴いナノ粒子の安全性を扱うNanotoxicologyと呼ばれる分野が急速に立ち上がりつつあり、実際、国際半導体テクノロジーロードマップ(ITRS) 2009 editionでもEnvironment, Safety and Health (ESH)の章を設け関心を見せている。細胞レベルでの毒性評価、感受性試験に当該技術の展開を図る。細胞の凍結を必要としない、試料室の大気圧化の検討も行う。
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