2012 Fiscal Year Research-status Report
外部刺激で構造と機能を可逆的にスイッチできるπ共役超分子ナノファイバーの創成
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24651117
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
宮田 幹二 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90029322)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 超分子ナノファイバー / 刺激応答性 / パイスタッキング / デヒドロベンゾアヌレン / 超音波 |
Research Abstract |
本研究では光、熱、音などの外部刺激によって、分子配列変換および物性変調が可能な激応答性超分子ナノファイバーの創製を目的としている。具体的には、刺激応答性部位を有するπ共役分子が自己集合した超分子ナノファイバーを作成し、それらに外部刺激を与えて分子配列変換および物性変調を達成する。本年度は、オクタデヒドロジベンゾ[12]アヌレン(以下12DBAと省略)をパイ共役コアにもち、2つのメチルエステル基が非中心対称に導入された誘導体1が形成する超分子ナノファイバーの結晶性、分子配列、光電子的挙動を明らかにするとともに、超音波の照射による分子配列変換および物性変調について検討した。 12DBA 1は、超分子ファイバーを与える従来の分子のように長鎖アルキル基のような置換基を持たないにも関わらず、その分子形状とエステル基間の静電的な相互作用によって、極めて異方的に結晶成長し、結晶性のナノファイバーを与えた。12DBA 1はいかなる条件下でも単結晶を与えなかったため、理論的な結晶構造予測によってファイバーの構造を考察した。その結果、多くの場合では極性分子はその双極子を打ち消すように交互に積層するが、このファイバーにおいては分子が同じ方向を向いて積層したモチーフ構造をもつことが示唆された。興味深いことに、ファイバーに超音波を照射すると、照射前とは異なる分子配列をもったナノファイバーへと構造転移することがわかった。さらに、その構造変化に伴ってファイバーの電気的特性(電荷移動度)が大きく変化することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
デヒドロベンゾ[12]アヌレンをパイ共役コアにもつ分子の超分子ナノファイバーの構築に成功しているが、そのファイバー中における分子配列の決定が困難であった。その理由として、この分子は結晶化せず常にナノファイバーを与えるためX線による構造解析ができず、またファイバーの配向性のためPXRDパターンによる解析もできないためであった。しかし、理論計算を駆使した「結晶構造予測法」に基づき候補となる結晶構造を計算し、その理論的なPXRDパターンを実測のPXRDパターンと比較することによって、確からしい構造を明らかにできるめどがついた。
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Strategy for Future Research Activity |
実験的にナノファイバーの分子配列を決定することは困難であるため、理論計算を駆使した「結晶構造予測法」に基づき候補となる結晶構造を計算し、その理論的なPXRDパターンを実測のPXRDパターンと比較することによって、確からしい構造を明らかにする。計算コストは分子のサイズに大きく影響するため、計算レベル等を慎重に検討する。また、コアを12DBA以外の構造にした分子の合成を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度の未使用額は、新しいパイ共役分子の合成を行うための試薬や溶媒等の消耗品の購入のためであった。本年度は超分子ナノファイバーの構造同定の段階でやや遅れがみられたが、理論計算により解決の見通しが立ったため、来年度は新しい分子の合成を行い、研究を推進する。未使用額は計画通りこれに当てる。
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