2012 Fiscal Year Research-status Report
ナノ空間内の14面体水分子ケージを活用したガス吸蔵の研究
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24651127
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
松井 広志 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (30275292)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | ガス吸蔵 / 水分子 / 閉ざされた水 / プロトン伝導 / 赤外分光 / マイクロ波 / ケージ / ナノチャンネル |
Research Abstract |
分子性ナノ多孔質結晶試料{[RuIII(H2bim)3](TMA)・20H2O}n中の親水性ナノチャンネル内に水和する水分子は、水素結合により14面体水分子ケージを形成する。このケージは、室温、大気圧で安定に存在する。この特長を活かして、本研究では、ケージ内にガスを内包させること(ガス吸蔵)を目指している。初年度最初に、FT-IR用ガスセルをガスボンベにより加圧でき、かつ、相対湿度の調節が行えるガスハンドリングシステムを製作した。CO2ガスによる加圧テストを行ったところ、セル内の相対湿度があまり調節できなかった。そのため、相対湿度調節したガスを循環させるように改良したところ制御可能になった。また、ガス加圧に対応したQバンド帯(46 GHz)の銅製円筒形空胴共振器(内径8mm、高さ10mm)を試作した。ガス導入のために共振器上下面に穴(直径0.5mm)を設け、上記ハンドリングシステムを接続してガス操作が行える。また、本計画で導入したマイクロ波発信器を利用したスーパーへテロダイン検波に基づくマイクロ波伝導率計測システムを完成させた。年度後半に、CO2ガス加圧下に試料を置いて赤外スペクトルとマイクロ波伝導率の測定を行い、考察を進めている。 分子性ナノ多孔質結晶{[RuIII(H2bim)3](TMA)・20H2O}nの合成の際、ナノチャンネル内にTHF分子を内包させた状態で試料作製を行うと、水分子ケージが相対湿度50%まで下げても安定的に存在し、同時にTHF分子が揮発してすべてのケージから抜けることが新たに分かった。水分子ケージの形状は14面体から多少変化したケージ構造をとるが、試料の取り扱いが簡便になり、ガス吸蔵研究において大きなメリットなる。赤外実験から水分子ケージのO-O間距離が広がり、また、プロトン伝導率は約1桁減少し、異方性も低下することが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ガスハンドリングシステムを設計、作製した。しかし、システムを加圧セルに接続してテストを行ったところ、加圧セル内部の相対湿度の制御が当初うまくいかなかった。ハンドリングシステムの構造を見直し、改良を加えるなどの試行錯誤を続けた。多くの時間を費やすことになったが、最終的に循環方式を採用することで解決できた。また、マイクロ波伝導率を測定するための加圧可能な銅製空胴共振器を設計、製作した。CO2ガスによる加圧試験を行ったところ漏れ等の問題はなかったが、共振器のQ値が低い値になった。加圧に耐える特殊な構造を持つためであるが、実用上はあまり問題ない。 水分子ケージに内包される水分子の数と、相対湿度の関係が明らかになった。初年度は、試料をCO2ガスで加圧して実験を試みた。加圧ついては、水分子ケージに特有な手順、手法があることが分かり、そうした糸口が見えてきた。CO2ガスを用いての実験を計画通り試みてきたが、吸蔵に伴う水和の安定性に関しては次年度も引き続き研究する。
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Strategy for Future Research Activity |
THFを内包させて作製した試料と、そうでない試料を使い、CO2、CH4、Xeガスの吸蔵実験を推し進める。こうしたガス環境下のもと、赤外分光スペクトルからは、ガスが水分子ケージ内に入ることにより、水分子に起因したOH伸縮振動、OH変角振動バンドがどのように変化するか調べ、ガスがケージ内にどのように取り込まれるか明らかにする。マイクロ波空胴共振器摂動法によるマイクロ波伝導率の実験から、水分子ケージの形状の違いにより、吸蔵条件、吸蔵状態がどのように影響を受けるか調べる。そして、Xeガスのプロトン伝導性への影響、および水分子中でのCH4分子の安定性に関する知見を得る。こうした研究を総括するとともに、学会発表を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり、平成25年度請求額とあわせ、平成25年度の研究遂行に使用する予定である。ガス吸蔵を最も適切で、かつ効率的に行うための実験条件を見出すために、次年度CO2、CH4、Xeガスを大量に使って実験を行う。Xeガスは非常に高価であるが、プロトン伝導性との関係は学際的に大変意義がある。CH4のガス吸蔵は、メタンハイドレートの形成過程や、海底から採掘が試みられているメタンガスの吸蔵とも深く関係する重要な課題である。ガスハンドリングシステムの配管の改良、赤外分光実験で試料を取り付ける基板材料、マイクロ波部品などの消耗品を購入する必要がある。その他、試料提供をしていただく東京理科大学、理学部、田所誠教授との打ち合わせの出張や、研究成果の学会発表のために経費を使う。
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Research Products
(4 results)