2012 Fiscal Year Research-status Report
金属触媒が不要で選択的成膜が可能なナノグラフェン膜の合成とその応用
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24651129
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
京谷 隆 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (90153238)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
干川 康人 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (90527839)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | グラフェン / 透明電極 / リソグラフィ / 選択成長 |
Research Abstract |
熱CVD法によるアルミナ表面へのナノグラフェンの堆積により、厚さ数ナノメートルの炭素薄膜を作製し、更にこれを用いた応用を検討した。 【1:ナノグラフェンの層数とサイズの制御】透明なサファイア(化学組成はアルミナと等しい)基板上に800℃のプロピレンCVDによって炭素被覆を行った。炭素薄膜は基板平面上に均一に被覆され、かつCVD時間を分単位で調整することで、グラフェン3~8層の範囲で厚さを制御することに成功した。本手法により、金属触媒を持たないアルミナ表面上にナノオーダーの厚さで制御されたナノグラフェン薄膜を作ることができる。例として8層分のグラフェンを被覆したサファイアは81~83%の透過率を示す透明導電膜として用いることが可能である。 【2:微細パターン化したアルミナ薄膜上へのナノグラフェンの選択的成長とその応用】シリカ/シリコン基板上にフォトリソグラフィー手法でパターンニングしたアルミナ膜表面上に、800℃のプロピレンCVDで炭素薄膜を選択成長させ、チャネル幅20 μm、長さ2 μmのナノグラフェン薄膜を作製した。更にナノグラフェン膜上に電極を形成させることで電界効果型トランジスタ(FET)としての特性評価を行った。FET特性は、グラフェン層数が1以下のナノグラフェン膜のときに確認された。これは、ナノグラフェン(ドメインサイズ約30 nm)がアルミナパターン平面上を完全に覆わず、パッチ状に連結して導電パスを形成することで、薄膜中にナノグラフェンの単一チャネルが形成され、その量子サイズ効果によってバンドギャップが形成されたためと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度ではCVD法によってアルミナ表面上に形成するナノグラフェン膜の制御(特に膜厚)について重点的に検討を進め、均質で薄いナノグラフェン透明電極膜の作製に成功した。更にこれらの炭素膜形成の知見を活かすことで、平成25年度に実施する予定だったグラフェントランジスタの作製と評価を前倒しで進めることができた。 これらの状況を総合的に鑑みると、本研究の全体的な目標達成度は現時点で半分以上達成されていると考えられ、研究は順調に進んでいると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
【1. グラフェンへのヘテロ原子ドープによる導電性の向上】導電性を高めるために、窒素やボロンなどのヘテロ原子をドープしたナノグラフェン薄膜を作製する。 【2. 透明電極の作製】1.の検討を進めることで、アルミナ薄膜をスパッタ成膜したガラス等の透明基板上に導電性と透過率の高い透明電極を作製する。 【3. グラフェントランジスタの構築と性能評価】平成24年度の検討で試作したナノグラフェン膜トランジスタの改良を進める。具体的にはナノグラフェンにヘテロ原子のドープや、グラフェンのエッジ面などに官能基を導入することで、バンドギャップの制御を試みる。最終的にこれらの特性を利用した化学センサへの応用も検討していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の研究では、サファイア、シリコンなどの基板、スパッタ装置消耗品(ターゲットなど)、分析機器の消耗品(AFMなど)、試料合成用ガス及び試薬、実験用ガラス機器、電気化学測定用器具などの物品費と、他研究機関で実験を行うための経費、調査・成果報告などの旅費を主な使用用途とする。 次年度では50万円以上の実験機器などの購入予定はない。
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