2012 Fiscal Year Research-status Report
脂質二重膜の安定性の破れのリアルタイム観察および理論解析
Project/Area Number |
24651134
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
瀧口 金吾 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (20262842)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
梅田 民樹 神戸大学, 海事科学研究科(研究院), 准教授 (90243336)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 脂質二重膜の変形 / リポソーム / リアルタイム観察 |
Research Abstract |
ミツバチ毒の主成分であるメリチンは、その単純な構造ながら様々な反応を脂質二重膜に生じさせることから、これまでにも多種多様な研究が行われてきた。 本研究ではまず、メリチンが脂質二重膜に引き起こす現象をリアルタイムで観察し分類した。メリチンは、リポソームとの濃度比や脂質二重膜に含まれる酸性リン脂質の量に依存して、リポソームに膜面積の増大や膜穿孔、高輝度縮小化リポソーム形成や融合、溶解を引き起こすことが分かった。以上の分類を基に、各現象が観察される条件下で、円偏光二色性の測定、メリチンとリポソームの共沈実験、電子顕微鏡観察、メリチンの19番目のトリプトファンの蛍光消光実験を行った。直接観察されたトポロジー変換も含む様々な膜変形現象と二次構造予測などの分光学的手法によって得られる情報との対応付けを行うことが目的である。 従来の研究では、溶液系全体に対する分光学的手法を用いた解析だけを行うものがほとんどであり、個々の膜に起きている現象を議論して来なかった。本研究によって、ペプチドがどのような構造を取りながらどのような膜との相互作用をする時にどのような膜変形が起きるのか、解明されることが期待できる。 また膜と様々なペプチドや蛋白質との相互作用をリアルタイム観察する過程で、エンドサイトーシスなどの膜輸送に重要な働きをしていると考えられているF-BARドメイン蛋白質ファミリーに属する蛋白質が、いずれもF-BARドメインを介して膜に結合し膜の突起形成を誘導するにも関わらず、膜突起の形成伸長過程と形成された膜突起の曲げ弾性が、膜に作用した蛋白質の種類毎に異なっていることが明らかになった。 これらの事実は、同じような構造や性質を持つドメインを介して膜と相互作用する場合でも、蛋白質全体の違いや周囲の環境や条件の違いに依存して、膜に生じる形態や動態の変化が異なってくることを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定通り、リアルタイム観察を主軸に据えた実験研究が代表者瀧口によって進められており、得られた結果は分担者梅田に逐次報告され理論解析が始められている。
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Strategy for Future Research Activity |
得られた観察結果を元に分担者梅田が、リポソームが安定性を失って変化する反応過程の理論的解析を試みる。その過程で創出されたモデルや仮説は適宜代表者瀧口にフィードバックして、作用させるペプチドや蛋白質の種類、溶液条件などのパラメータを変化させながら、リポソームの不安定化ならびに変形過程を光学顕微鏡を用いたリアルタイム観察によって検証することでさらに洗練する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究では静置水和法、Electroformation法、界面通過法など、実験条件に応じて異なるリポソーム調製法を利用するので、試料の調製と観察に要する消耗品類(ガラス器具類や使い捨てプラスチック器具類など)の種類および分量が多くなることが予想される。さらにリアルタイム観察では、長時間(数十分から1時間以上)に渡る継続的な観察が必要であるので、観察実験毎に膨大な動画データを処理保存するシステムを構築する際に必要なハードディスク、また編集解析その他の作業用にDVD用ディスク等のデータ保存用媒体を購入する必要もある。従って、消耗品の更新・補充にあてる費用を申請する経費の中心に据える。消耗品のための費用の内には、市販されている蛍光標識用試薬や蛍光リン脂質類などの薬品・試薬類の購入費用も含まれる。必要な試薬の量と金額はこれまでの実験経験を元に使用量を概算した。上記消耗品費以外では、各種学会・研究会への参加や研究協力者との研究打合せのための旅費に充てる。また本年度では、研究成果を論文等の形で発表するための経費も用意する。
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Research Products
(3 results)