2014 Fiscal Year Research-status Report
低エネルギー消費型光学応答性極微細素子プロトコルの創出
Project/Area Number |
24651139
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
廣瀬 敬治 大阪大学, 基礎工学研究科, 准教授 (10252628)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 有機化学 / 1分子科学 / ロタキサン / エネルギー / 合成化学 / ナノ・マイクロ |
Outline of Annual Research Achievements |
「ランダムな分子運動エネルギー」の利用は分子サイズの機械に限られる特徴的な機能である。分子サイズの機械は合成化学の技術を駆使して創り出し得る。ロタキサンはこの様な先進的分子機械構造の第一候補に位置づけられる。中でもロタキサン研究の最大の問題点は決定的な合成法が無い事、明確な用途を提示できるだけの物性が探索されていない事、そして激しい熱運動の明確な制御技術が無い事にある。まずリング・ストッパー成分結合型プレロタキサンに対し、かさ高いアミンを作用させるというアイデアに基づいた新しいロタキサン合成方法を始め、高いロタキサン選択性のみならず化学収率もほぼ定量的であることに加え、反応試薬や触媒が不要なので、後処理も簡便となる斬新かつ実用的に有用性の高い方法とした。既に本合成法をロタキサン固有の物性発現と解明に展開した。C∞v対称の軸分子とCs対称の環分子の組み合わせによりロタキサンに特異なキラリティーに関する研究を展開して、その鏡像体を光学的に純粋な形で単離することに成功した。得られた、ロタキサン構造に固有のキラリティーを有するロタキサンの絶対構造を決定するためにX線構造解析用の単結晶作成を試みているが、現在のところ成功には至っていない。光学的性質の解明に関しては、円二色性スペクトルを複数のロタキサンで得ることに成功した。スペクトル情報から絶対構造の決定を試みているが、構造上の特徴である柔軟で運動性が高いために困難を極めている。一方、ロタキサンの激しい熱運動の制御のために、比較的小さな輪成分であるジベンゾ-24-クラウン-8を有するロタキサンの高い運動性を定量的に評価し、ブレーキ効果を調べ、その知見を分子設計指針として確立するために独自の構造をしたモデルの設計、合成そしてスペクトル測定法を開発しながら、その評価をした。これらの成果については学会での報告と論文への投稿によって公表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した計画のデータは概ね取ることが出来た。特に高い目的である、ロタキサン構造独特の特異な構造をしたロタキサンの光学的性質を調べる事に関しては、このロタキサンの大量合成を確立することが出来たため、充分に精度の高いスペクトルを取ることに成功した。最後の目標である、ロタキサンの激しい熱運動の制御にいかす事の出来る技術開発として、シャトリング運動性を定量的に評価し、分子設計指針を確立するために適したモデルロタキサンを設計し、その運動性を定量的に評価することに成功した。これらの成果については学会での報告と論文への投稿によって公表すると共に、国内外から問い合わせがきており、依頼講演等でこれらにも応えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、ロタキサン構造に特有のキラリティーを有するロタキサンの絶対構造を決めるための努力を続けると共に、これまでに得られた成果の発表に務める。
|
Causes of Carryover |
26年度にシャトリング測定のためにDNMRスペクトルの線形分析をおこない、その結果を基にシミュレーションを行うと共に成果を発表する予定であったが、測定結果の精度が低くかったため、計画を変更し、再合成して精製した後に、再測定を行うこととしたため、未使用額が生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記の理由のため再合成と精製後に再度の測定を行い、再解析の後にシンポジウムでの発表を行うこととし、未使用額はその経費に充てる。
|