2012 Fiscal Year Research-status Report
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24651141
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
田中 裕行 大阪大学, 産業科学研究所, 助教 (20314429)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | グラフェン |
Research Abstract |
SPMを用いたグラフェンのナノポア加工をめざし様々な条件で、グラフェンを作成し、SPM観察を行った。SPMのポテンシャルを発揮するに相応しいグラフェンの作成から開始した。つまり、広範囲で原子レベルで平坦なグラフェンの作成するために、グラファイト基板の上に金属ニッケルを蒸着・熱処理し、グラファイト上にニッケル(111)を成膜する。そのとき、下地のグラファイトからニッケル層に固溶したカーボンが最表面(ニッケル層と真空の間)に析出し、グラフェンを成膜させることに成功した。 作成したグラフェンの評価として、大気中STM観察を行い、原子レベルで平坦な表面の観察に成功した。もし、グラフェンが成膜されていない場合は、ニッケル酸化物などのため、大気STM観察ができないと予想される。さらに、AFMで数十マイクロメータースケールの広範囲で観察を行ったところ、ニッケルのドメインが10マイクロメーター程度の大きさであることが明らかになった。大気STM観察とAFM観察のどちらでも、ドメイン内の平坦な領域にはDNA状の構造が散見された。このような構造は、ニッケルには存在せずに、グラファイトやグラフェンにときより見られる特有なもの(ドメイン壁、皺のようなもの)であり、グラフェンの作成に成功したことを強く裏付けるものである。 なお、大気STM観察が不安定になることが多く安定な加工が困難であった。そこで、不安定の原因となる湿度の制御や、STMとAFMの融合したいわゆるqPlusセンサータイプを導入することを検討し、現在実験装置系の改造を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
質の高い大きな面積のグラフェンを用意することは通常困難である。例えば、劈開で得られるグラフェンは通常数マイクロメーターと小さい上にデバイスの特性を悪化させるような欠陥が多いと言われている。また、CVDなどの手法で作成されることも多いがそれも十分ではないといわれている。最も高品質なグラフェンは、ニッケル単結晶の上にCVDで作成される。本研究では、ミリメーターオーダーの大面積の単結晶に比べるとドメインのサイズは10マイクロメーター程度と小さいが、高品質のグラフェンを作ることができたと考えられる。 なお、フリースタンディングなグラフェンは微細加工で作成することが、共同研究で出来ることになり、実際のデバイス構造の中でのポア加工を直接できる道が大きく展開してきた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、ドメインのサイズは10マイクロメーター程度と小さいが、高品質のグラフェンを作ることに成功している。そこで、そのグラフェンを、大気STMおよびSTM/AFM複合機を開発して、グラフェンを可視化確認、加工部位のポジショニング及びポア加工を続ける。 なお、フリースタンディングなグラフェンは微細加工で作成することが、共同研究で出来ることになり、実際のデバイス構造の中でのポア加工を直接行う選択肢ができたので、そのようなグラフェンに対しても、自作のグラフェンと同様に加工を試み、本提案研究目的を達成する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度では、前年度に引き続き、ポア加工となるグラフェン(微細加工によるフリースタンディングなものを含む)の作成を行うための真空材料、クリーンルーム等消耗品、また、測定・ポア加工に必要となる防音・恒温や湿度制御用のための真空部品等、さらに、STM/AFM複合機開発に必要な電子パーツや制御機構となるパーツ等の物品を購入し計画を遂行する。 最終目的は、グラフェンのSPMによるナノポア加工であり、さまざまなグラフェン(ニッケル上のグラフェンや実際のデバイス上で作成されたフリースタンディンググラフェン)を対象にして行う。さらに、SPMによるナノポア加工後は、その場で、SPMトポグラフ測定や、表面電位(接触電位差)測定などによって、ポア加工の評価を行う。
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