2013 Fiscal Year Research-status Report
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24651149
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Research Institution | Fukuoka Industrial Technology Center |
Principal Investigator |
木村 太郎 福岡県工業技術センター, 化学繊維研究所, 専門研究員 (40416491)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内山 直行 福岡県工業技術センター, 化学繊維研究所, 研究員 (10502247)
齋田 真吾 福岡県工業技術センター, 化学繊維研究所, 研究員 (20502248)
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Keywords | ナノファイバー / 多孔質体 / 水溶性高分子 / 凍結乾燥 |
Research Abstract |
研究実施者らは、高分子水溶液を凍結乾燥することで様々なナノ構造体を形成する「凍結乾燥法」を見出しており、そのナノ構造形成のメカニズムを詳細に解明し、更に作成したナノ構造体について、実用化展開を検討することを目的としている。26年度は、「凍結乾燥法」をより実用的な技術に昇華させるために①不溶性ナノファイバーの作製技術の確立、②大面積シートの作製方法の確立に取り組んだ。 不溶性ナノファイバーを製造するためにアルミナの前駆体であるベーマイトナノ粒子を利用した。具体的には、ナノファイバーを作製する高分子水溶液にベーマイトナノ粒子を添加しておく。この混合物を材料として高分子/ベーマイト混合ナノファイバーを作製し、焼結させることで、アルミナナノファイバーとするものである。研究実施者らは、鋳型となる高分子の設定、高分子/ベーマイト混合比、焼結温度・時間、等について検討を行い、アルミナナノファイバー製造のための最適条件を探索した。例えば、鋳型高分子としてシゾフィランを用いた場合は、混合比1:1、焼結条件1000℃/7hとすると、繊維径200nmのアルミナナノファイバーが得られることを明らかとした。このアルミナナノファイバーは、水中でも溶解しない、耐熱性が高い、といった特徴があるため触媒の支持体としての応用が可能であると考えられる。 大面積シートの作製については、支持体との複合化により達成できると見込まれた。具体的には、綿やろ紙などに、高分子水溶液を染み込ませた状態で凍結乾燥を行う方法である。生成物を走査型電子顕微鏡で観察したところ、期待した通り、綿やパルプの太くて粗な網目構造の中に、細い密なナノファイバー網目構造が観察された。この様に支持体とのダブルネットワーク構造を構築することにより、機械的強度に優れた微粒子除去用フィルターへの応用が可能になると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
26年度は、「凍結乾燥法」をより実用的な技術に昇華させるために①不溶性ナノファイバーの作製技術の確立、②大面積シートの作製方法の確立に取り組んだ。 当初ナノファイバーの不溶化については、2官能基を有する架橋剤を反応させることで実現する予定であった。しかしながら、検討を進めるにつれ架橋法では、完全な不溶化は困難である(一部は溶解してしまう)、架橋反応の進行によりファイバー径が太くなってしまう、という欠点があることが判明し断念した。そこで、ベーマイトナノ粒子を用いてアルミナナノファイバーとする方法に変更した。その結果、元の鋳型高分子が形成しているナノファイバー構造を忠実に反映した無機ナノファイバーを製造することが可能となった。従って、想定していた方法とは異なるが当初の目標は達成することが出来たと考える。 大面積シートの作製については、凍結乾燥の規模を単純に拡大するだけでは、凍結時に割れてしまうなど不具合が発生しうまくいかなかった。そこで、フィルターや支持体などと複合化させる方法を採用した。「凍結乾燥法」は高分子水溶液を凍結し真空乾燥させるといった単純な操作でナノファイバーの作製が可能となる点に特徴があり、フィルターに染み込ませるだけで、内部にナノファイバーを作製することが出来た。これにより強度を保ったまま規模を拡大することが可能となることが示唆された。シート内でのヒビや隙間などの検討は今後行う必要があるが、目標達成の目処が立った。 以上により、概ね25年度の目標を達成することが出来たと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度までに得られた知見を元に、「凍結乾燥法」により製造したナノファイバーシートの機能性について評価を行う。具体的には下記の検討を行う。 (1)触媒ナノ粒子との複合化検討 「凍結乾燥法」の利点を生かしてナノファイバー及び多孔質体と触媒ナノ粒子との複合化を試みる。触媒ナノ粒子としては光触媒効果のある酸化チタンなどを用いる。電子顕微鏡による複合化状況の検討と、条件の最適化を行う。また、得られた複合体について機能評価を行いその効果を検証する。 (2)充填材としての検討 「凍結乾燥法」を利用して製造したナノファイバーなどを樹脂への充填剤として応用する。ポリマー材料により親水性付与、強度向上、導電性変化といった効果が見込まれ、機能性充填剤としての基盤技術の確立に取り組む。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
25年度は、研究に必要な液体窒素などの消耗品を当所内の経常経費から調達することが出来たため計画よりも研究費の使用が少なかった。また、ベーマイトなどナノファイバー材料の一部を製造元から無償提供してもらうことが出来た等、経費の節減ができたため研究費の使用が抑えられた。 25年度の研究結果から、樹脂の充填材としてナノファイバーが有効ではないかという可能性が見いだされ、調査を重点的に行いたい。樹脂の充填剤として評価する場合、必要量が数十gから数kg必要になると想定されるため、材料費などが当初見込みよりかかることになる。従ってこれに必要な高分子試薬類等に研究費を充当したい。
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Research Products
(2 results)