2012 Fiscal Year Research-status Report
赤外線センサアレイ応用のためのZnSeの低温高速堆積技術の研究
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24651155
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
田中 秀治 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00312611)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | マイクロセンサー |
Research Abstract |
本年度は,ホットワイヤを用いた新しいCVD(chemical vapor deposition)装置を自作で構築した。このCVDは,水素からホットワイヤで反応性の高い原子状水素を生成し,それを反応室に移送して,ソースガスと反応させて基板に成膜するものである。ホットワイヤで原子状水素を生成する部分と,基板に成膜する部分とが空間的に分けられているところがリアクタの構造的に新規な点である。これによって,ホットワイヤからの輻射熱が基板に伝わり,微細構造等が形成された基板が不要に加熱されるのを防ぎ,また,ソースガスがホットワイヤに触れ,ホットワイヤが酸化されたり腐食されたりするのを防げる。 このCVD装置の目的は,MEMS用赤外線窓材としてのZnSeの成膜であるが,本年度は,上記新規なリアクタの基本性能を検証した。まず,CVD装置を自作で構築し,基本動作を確認した後,原子状水素の発生量を測定した。原子状水素の発生量は,酸化タングステンを含有するガラスを用いて,ガラス内の酸化タングステンが原子状水素で還元され,ガラスの光透過率が減少する現象によって測定した。その結果,原子状水素が長距離輸送されて成膜室まで到達していること,しかも,その量が従来のホットワイヤCVD装置より2桁程度,多いことがわかった。これは,リアクタが総ガラス製で,原子状水素が失活しないことが大きな理由である。 また,成膜室に水蒸気を導入し,どのような条件で水蒸気の逆拡散が起こらないかを,実験と計算機シミュレーションで確認した。期待通り,一定量以上の水素を流せば,試水蒸気はホットワイヤに到達せず,安定してホットワイヤが使えることを確認した。 以上のように,新しいホットワイヤCVD装置の基本性能を確認し,今後の成膜実験の基盤を整えた。なお,本装置の構成について特許出願し,基本性能の評価結果について学会報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は,ホットワイヤCVDによるMEMS用赤外線窓材としてのZnSeの成膜であるが,そのための新規装置を開発し,その基本性能は期待通りであった。新規装置の自作による構築は大変時間のかかるものであるが,基本性能の確認まで1年間で予定通り進めることができ,研究は順調に進んでいると自己評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度までに,新しいホットワイヤCVD装置を構築し,その基本性能を確認した。今後,目的のZnSeの成膜を行うが,それに先立ち,基本性能の確認の一環として,原子状水素を用いた還元プロセスやクリーニングプロセスを試みる。これは基本性能の確認というだけではなく,応用的意義もあるものである。 その後,ZnSeの成膜を行うが,成膜条件が完全に不明なので,トライ・アンド・エラーでプロセスウィンドウを探索する必要がある。プロセスウィンドウが見つかった後,成膜条件を振りながら,膜組成,成膜速度,分光特性などを調査する。最終的に,応用可能性のある膜が得られると,本研究の目的が完全に達成される。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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