2012 Fiscal Year Research-status Report
非平衡場を利用したマイクロハイドロゲルの時空間動的セルフアセンブリ
Project/Area Number |
24651159
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
瀧ノ上 正浩 東京工業大学, 総合理工学研究科(研究院), 講師 (20511249)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
尾上 弘晃 東京大学, 生産技術研究所, 助教 (30548681)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 自己組織化 / マイクロマシン / マイクロ・ナノデバイス / 生物物理 / DNAコンピュータ |
Research Abstract |
従来の自己組織化システムは,系の安定点に収束させることで,ある構造を構築する“self-assembly”を利用 したものが一般的であったが,この場合,結晶などの均一な構造を作ることが限界であり,生命システムなどの複雑で自律的なシステムを構築することができなかった.本研究では,動的な自己組織化としての“self-organization”を目指す.すなわち,非平衡環境下で,分子のスケール(ナノメートル)の反応から,マイクロ・ミ リメートルスケールのシステムまで階層的に結びつく非常に複雑な動的な自己組織化現象を利用した,新しいシ ステム構築,新しいものづくりの方法を確立することが目的である. この目的を達成するため,今年度は以下の2項目の実現において成果を上げた. (1)DNA 機能化マイクロハイドロゲルの開発:マイクロキャピラリーと超高重力環境を利用し表面をクリーンに保ったままゲル化する手法により,アルギン酸マイクロハイドロゲルの作製を行い,その表面に DNA を吸着させることに成功した.吸着は負に帯電している DNA およびアルギン酸ゲルの間を正に帯電しているカルシウムイオンで架橋する方法で実現した. (2)マイクロハイドロゲルの形状複雑化:従来の手法で作製できるゲルは,球形に限られていたが,当研究によって,星型(タービン型)や勾玉型,リング状構造などの複雑で多様な形状を持つマイクロハイドロゲルを作製する手法の開発に成功した.これにより,自己組織化のためのマイクロハイドロゲルに構造情報を付加することに成功した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究で,研究計画に記載した通り,マイクロハイドロゲルの形状複雑化で特に大きな成果を挙げた.従来の手法で作製できるゲルは,球形に限られていたが,当研究によって,星型(タービン型)や勾玉型,リング状構造などの複雑で多様な形状を持つマイクロハイドロゲルを作製する手法の開発に成功した.これにより,自己組織化のためのマイクロハイドロゲルに構造情報を付加することに成功した.また,このゲルを分子情報で自己組織化するための分子修飾として,DNAナノ構造をハイドロゲル表面に吸着させることに成功した.ここでは,アルギン酸マイクロハイドロゲルの表面に DNA を静電相互作用による吸着で実現している.具体的には,負に帯電している DNA およびアルギン酸ゲルの間を正に帯電しているカルシウムイオンで架橋する方法で実現した.以上から,マイクロハイドロゲルを4次元時空間セルフアセンブリさせるための基礎技術の確立が行われ,次年度から,それを用いた研究に取り組むための基盤が整っている.これは,研究計画に記載した通りに達成されている.
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Strategy for Future Research Activity |
今後も研究計画にある通り,下記の研究を実施していく. (1) DNA・ゲル形状による3 次元空間セルフアセンブリ:まず,今年度開発したゲルによる3 次元構造の構築を行う. ゲル表面の DNA による塩基対間水素結合によって, ゲル同士は結合選択性のあるセルフアセンブリを起こす.しかも, ゲルは特殊な構造を有しているので, 立体障害があり, セルフアセンブリでできる構造が決定される.生体内で,DNA やタンパク質が水素結合だけでなく,分子の立体形状を利用した,鍵と鍵穴的な構造形成をするのに類似している自己組織化であり,このような新規技術の実現を目指す. (2) DNA・ゲル形状・pH の時間振動を利用した4 次元時空間セルフアセンブリ:マイクロゲルを含む場でpH 振動反応を起こすと, ゲル表面の DNA の構造が時間変動し,それに伴い結合能も時 間変動する.これを用いて,同心円,縞模様,らせん,樹状模様など,複雑な自己組織化構造を構築する.このように,時間情報を含む自己組織化である,4次元時空間動的セルフアセンブリの実現を目指す. (3) さらに,ゲルでできた構造の自発的な運動のような動的な時空間情報の構築も目指していく.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費の主な用途は,実験のための消耗品類・実験試薬の購入と,研究成果の発表(論文・学会発表等)である.具体的には,ガラスキャピラリー,アルギン酸ナトリウム,塩化カルシウム,DNA等の試薬・消耗品類などである.研究の最終年度であり,年度前半に実験を集中的に行うため,年度前半での支出が多くなる予定である.年度の後半は,研究をまとめる段階であり,学会発表や論文投稿などの支出が中心となる予定である.なお,H25年度に効率良く集中的に実験を行うため,H24年度からの繰越を行っている.したがって,H24の未使用額も上記計画のために使用する計画である.
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