2013 Fiscal Year Research-status Report
自己発電かつ自律推進する液中マイクロロボットの開発
Project/Area Number |
24651162
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
渕脇 大海 横浜国立大学, 工学研究院, 准教授 (20377021)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山梨 裕希 横浜国立大学, 工学研究院, 准教授 (70467059)
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Keywords | SMAコイルばね / ヒートエンジン / 出力エネルギー最適化 / 液中マイクロロボット / 局所加熱 |
Research Abstract |
今年度は、液中マイクロロボットの駆動源として有望な形状記憶合金(SMA)を用いたヒートエンジンについて研究を行った。まず始めに線形力学モデルを提案し、SMAコイルバネが線形バネとして近似できる場合で、かつ低温領域、高温領域でのコイルバネのコイルの交換数が一定となる条件を用いることで、定常状態において出力されるエネルギーが最大となる一般解の導出に成功した。この一般解は、1970年代から研究が盛んに実施されてきたSMAヒートエンジンの研究の歴史の中でも、初めての導出であり、学術的に有望な知見が得られたものと判断している。得られた解析結果を用いて、直径50μmの世界で最も細い市販のSMAコイルバネを使用してヒートエンジンを試作した。二次元構造のヒートエンジンは、加熱・冷却をうまく行うことができずに、動作させることができなかった。そのため三次元構造のヒートエンジンを試作したところ、十分に加熱・冷却できることを確認したが、選定したSMAコイルバネの残留歪の影響で連続回転させることができなかった。実験結果を分析したところ、線形性の高いSMAコイルバネを開発するか、ステンレス等の線形コイルバネとSMAコイルバネを接着することで、線形バネとしての特性も具備させる必要があることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は、1mmサイズの液中マイクロロボットで必須となる超小型エンジンとして、SMAコイルバネを用いたヒートエンジンを提案した。初めにヒートエンジンを線形モデル化し、理論解析によりその運動機能、エネルギー発生機能を定式化し、寸法に対してヒートエンジンの発生力は二乗で減衰し、静電気力、慣性力、重力などの寸法の三乗に比例して減衰する力よりも小型化に有利であることを理論的に示した。粘性力はヒートエンジンと同様に寸法の二乗に比例するが、典型的な物性値を代入することで、ヒートエンジンのほうが粘性力よりも大きくなるという概算を得た。つまりヒートエンジンを用いて液中マイクロロボットを駆動できることを理論的にほぼ立証した。しかし原理確認用の数立方cmサイズのヒートエンジンを設計し試作を行ったところ、SMAコイルバネの残留歪の影響で連続駆動させることに失敗した。以上の理由から、研究進捗状況としてはやや遅れていると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の課題としては、①導出した発生エネルギーの一般解の妥当性を検証するための、大型のSMAコイルスプリングを用いた実験装置の開発。②磁気共鳴法などにより局所的に加熱・冷却するための装置の開発。③50μmの直径を維持したまま、SMAコイルばねに線形バネの特性を付与する事。また、④過酸化水素水が白金触媒により酸素を発生する原理を応用したバブルジェット法によるマイクロエンジンの研究も進める。さらに自律性の付与法として、左右のエンジンの停止機能を外部の電磁場の分布により行えるシステムの開発を行う。これにより、⑤電磁場のエネルギー勾配に沿って液中マイクロロボットが自動推進する機能について理論解析および⑥実験システムを開発する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
出来る限り予算を節約して使用したところ、予定していたよりも少ない予算で研究を執行することができたため。 生じた残金は、本研究のデータをまとめるための事務用品代に充当する予定である。
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