2013 Fiscal Year Research-status Report
農業経営における意思決定統合支援システム構築に向けた多期間作付計画に関する研究
Project/Area Number |
24651174
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
伊藤 健 東北大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (80309492)
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Keywords | 経営工学 |
Research Abstract |
前年度の研究成果により,多年度にわたる収穫量最大化を目的とした輪作計画問題について,本研究が目指しているシステムの構築に大きく寄与するであろう簡略な定式化の方向性を示すことができたが,各種の学会,研究会に参加した際に吸収した最適化の知見から,より一般的なモデルへと更新することができた.本モデルの特徴は,栽培周期数に応じた層数をもつ階層型ネットワークによって対象とする輪作計画問題を記述しており,始点から終点への各パス(経路)が一連の輪作パターンに対応している点である.また,連作障害をもたらす作物の種類(ナス科,マメ科など)毎に収穫量への影響度を定義し,時間の経過に応じてパラメータを変化させることにより,連作障害による効果(影響)の増減を反映することが可能である.これら収穫量への影響度をもとに,各輪作パターンを採用した場合に得られるであろう各期の利益を計算し,対応する層間を接続するアークに「距離」として割り当てる.これによって,始点から終点への最長経路(クリティカルパス)を計算することにより,多年度にわたる栽培の結果,最も利益が見込める輪作パターンを求めることができる. 最長経路を計算する具体的な方法については考察していないが,作物の種類や栽培年数が極端に多くなれば,輪作パターンが爆発的に増加することになるため,この点については分枝限定法や動的計画の概念を用いるなど,最適輪作パターンを効率的に発見する手法を検討する必要がある.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は,農業における多期間(多年度)にわたる作付計画について議論することにより,経営意思決定統合支援システム構築に向けての部分的貢献を目標としているが,対象とする問題をネットワーク計画問題へ落とし込みむことで基本数理モデルを提案できた成果は大きく,規模の大きな問題に対する最適輪作パターンを求める効率的解法こそ明らかにできていないものの,グラフ理論における様々な性質が利用できる状況を作り出せたことは極めて価値があり,それによって本研究が大きく前進したと考えられるため.
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Strategy for Future Research Activity |
多期間にわたる作付計画については一定の成果が得られたが,これは各栽培期に単一種類の作物のみを栽培するという前提のものであり,金融におけるポートフォリオと同様,病気などの影響によるリスクを考えれば,複数作物を栽培する方が経営者にとって好ましい場合もある.しかし,従来の作付計画問題は単純な線形計画問題により定式化され,各作物の作付け面積を導出するのみで,所有している土地の,いずれの区画に作付けを行うべきかは議論していない.毎期,複数種類の作物を栽培していれば,それら作物の区画への割り当て状況に応じて,区画毎の連作障害の影響が異なるため,各作物の作付け割当て区画を含めた最適化が必要となる.また,中小規模の営農でも利用できるシステム構築を目指すためにも,本研究のもう一つの目標でもある,ファジィ概念化も検討する必要がある. したがって,今年度は作物の作付け割当てを議論する数理モデル,およびそのファジィ概念化の提案に向けて研究を進める.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生 平成26年度請求額とあわせ,平成26年度の研究遂行に計画的に使用する予定である.
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Research Products
(2 results)