2012 Fiscal Year Research-status Report
大規模災害への復元力のある新たなグローバル社会システムの再構築
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24651193
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
早田 宰 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 教授 (80264597)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
土方 正夫 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 教授 (60156594)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 復元力 / 大規模災害 / 田野畑村 / 気仙沼市 / Bounce-forwardability / パナーキー循環サイクル |
Research Abstract |
東日本大震災後、岩手県田野畑村、宮城県気仙沼市において復元力の経過観察と分析をしている。 岩手県田野畑村は地方沿岸港であり、比較的復興が早いペースで進んでいる。安全を重視し、元に戻す、戻せないところは行政が責任をもって計画案を作成し示し、住民から理解を得る、創造的な復興については集会機能を強化する、観光誘致を同時並行するというプロセスが徹底している。グローバル性は強くない。ある程度まで復旧が進んだ段階で村の今後、創造的復興について基本的なレベルから再考する必要が生じると予想される。復興速度は早いが、資源結合度をどう高めるかが課題である。 一方、宮城県気仙沼市では比較的復興がやや遅いペースで進んでいる。国際的な港であり、グローバル性が強く、水産関係の復興は市場圧力、他都市との競争から急がれる。一方、市民や世論との対話でコンペなどを採用して復興を推進している一方、市民の中での合意形成のしくみづくりが過渡期である。それが高台移転などの復興スピードのばらつきにつながっている。その反面、創造的復興、水産業のまちの今後が、多様なレベルで常に議論されており、長期性、総合性、一貫性が保たれている。復興速度は決して早くないが、資源結合度が高い。 これらの分析から創造的復興を実績のみならず社会体制の構築の度合い、住民グループの結成、ビジョン構築、活動の3つの面から測る必要、パナーキーの循環サイクルのモデルでその現状のプロセスを位説明する必要、Bounce-forwardability(復元前進力)という概念を明確にする重要性を指摘した。 日本と海外比較は、イギリスのバーミンガムにおける竜巻災害と自動車工場閉鎖後の復元について比較研究をおこなった。またグローバル支援については赤十字を通じた各国の寄付・相互支援の実情について分析した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
グローバル復元力は震災当初は当為としてその状況想定したが、震災から2年が経過し、復旧フェーズから創造的復興を議論できる(あるいはすべき)フェーズに移行しつつある。市場圧力により、その必要性が予想以上に高く、当初の仮説が正しかったことと同時に、その調査を進化させる必要性があるといえる。 気仙沼市においては、地域団体等のグループの調査について地域まちづくり課との信頼関係を構築し、市の自治基本条例のための地域団体調査と連携することが可能となった。また震災復興企画課と信頼関係を構築し、スローシティについてのプロセスについてヒアリング調査をおこなった。それらの準備が平成23年度にできたため、平成24年度はその実施に移すことにする。
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Strategy for Future Research Activity |
田野畑村、気仙沼市で経過観察を続ける。海外からの支援の実態を調査し、資金援助(寄付・投資)、人的交流、技術提供、アイデア交換、交流促進等の資源動員を可能な限り明らかにする。グローバル復元力の実態を明らかにする。また、円安などグローバル経済の産業への影響について考察する。 グループ調査は、気仙沼市で集中しておこなうこととし、地元紙に掲載された典型的なもの、また行政の把握しているグループについて調査をおこなうこととする。地域内の復興活動をおこなう社会的経済的なグループについて調査をおこなう。そのグループがいかなるビジョンを構築し、復興活動をおこなっているか、グループごとにヒアリングをおこなう。さらに、その活動における海外の影響について調査をおこなう。それによってグローバル復元力の構造を解明する。調査団体はリストアップする地域団体がおおむね100、グローバル復元力の影響の顕著なケーススタディすべき団体はおおむね10団体前後と想定している。 海外調査は、当初どおりイギリス、フランスの影響を調査しつつも、それに加えノルウェーの資源管理型漁業、イタリアのスローシティからの示唆を気仙沼市が積極的に学び取り入れようとしており、それらについてのフォローも行う。とくに気仙沼市ではスローシティの認証を得たことから、その進化・展開について検討していく。 また田野畑では北欧のコ・プロダクションの考え方について地元リーダー層と意見交換をおこなうこととし、今後の村の創造的な復興についてのあり方を整理する。 その他、他地区でのグローバル復元力の事例についてはフォローしてゆく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
会議頻度が多いため、ウエブカメラの搭載されたノートパソコン1台を購入する。旅費は、気仙沼市、田野畑村への新幹線とレンタカー、集団での移動(バス借り上げ)などの使用料が中心となる。グループについて調査は、ヒアリング団体および学生の調査チームの協力が不可欠であり、人件費・謝金にその比重を置くこととする。また海外調査については文献資料の購入が必要となる。また現地調査は、シャンティ国際ボランティア会という現地で活動するNPO団体へ経過ヒアリングを集中的におこなうことが多いため、その謝金が必要となる。
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Research Products
(7 results)