2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24651196
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
箕浦 幸治 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (10133852)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 東北日本沖太平洋地震津波 / 海水溯上 / 津波堆積物 / 引き波 |
Research Abstract |
東北地方太平洋沖地震津波(以下3.11 津波)は沿岸の各地に襲来して甚大な水被害をもたらした。地震に伴 う地盤沈下が海水の溯上と滞留を促した。申請者は、福島県相馬市から青森県東通村にかけての沿 岸各地を震災翌日から調査を開始し、他に類をみない多様な被災状況を観測した。3.11 津波は極めて大規模・ 広範囲の侵蝕作用を特徴としており、特に防潮堤破壊と水田面侵蝕は著しい。防災の政策判断に際して、災害科 学的情報は不可欠であり、仙台平野での津波現象の理解は重要な示唆を与える。同一起源で同 一の場に溯上した津波が、全く異なる水理作用をもたらした原因を解明することが、本研究の課題である。原因となる水理堆積学的機能が仙台平野で解明されれば、氾濫想定域の災害対策上最も適切な防災指針が得られる。 3.11津波による溯上現場を、仙台平野を中心に、三陸のリアス海岸を除いて最終的に千葉県犬吠埼から青森県東通村にかけての太平洋沿岸域を広範囲に調査した。得られた津波溯上の堆積 学的観察と公表された多くの動画から溯上の水理現象を予察的に解釈したところ、強力な侵蝕力を伴った津波溯 上であった事実が明らかとなった。溯上流は至る所で水田基底を侵蝕し、大規模に洗われた場所では貞観津波の 堆積層が露出し、1100 年の時を隔てて襲来した2つの津波の痕跡を同一条件で観察記載することができた。復 旧と復興に向けた努力により被災地では津波痕跡がほぼ消失しており、申請者が測線を設けて観測した結果と採 取した堆積物試料は、両津波復元に向けての得難い物証となっている.研究の初年度では、得られた堆積物を分 析し、既得の測地データと併せて,3.11津波の溯上を堆積学的に解析した. 採取済みの堆積物試料を多岐に分析し、主に堆積学的な結果に基づき、3. 11津波溯上の水理堆積現象をほぼ明らかにすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2011津波に関する溯上流の水理堆積学的機能を堆積相と粒度組成の解析により解明に努め、仙台平野での調査を通してある程度の理解を深めることができた。溯上流による物質の移動過程については、相馬市松川浦でのトレンチ調査により大規模平行葉理層(アンチデューン)を見いだし、2011津波溯上流の水理学的な解釈ができた。陸上とは別に、仙台湾での海上観測と試料採取を試み、底質表層直下に砂泥層を検出し、セシウム134の測定から底質表層直下に戻り流れによる堆積層と判断した。平行葉理層と砂泥層の発見大きな成果であり、2011津波の水理学的解明に向けて今後の理解に貢献すると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
1000年に1度と言われる津波が襲来し、東北日本の太平洋沿岸は甚大な犠牲を強いられた。2度と起きてはな らない災害である。津波は自然現象であるが、人の活動に支障が及べば自然災害となる。人の行動が災害を拡大 すれば人災となる。現代に於いても津波災害から逃れる術は有り得ないが、人災の回避は可能である。3.11津波を経験した我々が津波溯 上流の真相を究めることにより、こうした過去の災害の実態を認識させる一方、減災に向けての正しい政策敵判 断を与えるものと期待される。 25年度では、下北半島で採取した試料を分析し、地形と溯上流の特性を踏まえ、地表面限界摩擦速度の増加が流れに及ぼす効果を検証する 。貞観津波襲来時は海岸に近接して砂丘地が発達しており、溯上流がその頂部を越流したとすれば射流により砂丘間凹地が侵蝕されたはずで、これが砂を流れに供給する原動力となったとの解釈が成り立つ。下北半島で見いだした800年前の津波溯上堆積層を詳細に分析し、この可否を判断する。その際に、東通村での3.11津波の痕跡観測は重要な示唆を与える。両年度で得られ た結果を総合して溯上流の水理学的状態を復元するモデルを構築し、数値的に検証した結果を国内外の学会で紹 介する。得られた結果はAGUや国際堆積学会等で公表する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし。
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