2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24651198
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
鍵山 恒臣 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (50126025)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
潮見 幸江 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 研究員 (60584266)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | 火山 / 重力勾配 / 自然災害 / 火山噴火 / 測地 / 地下水 |
Research Abstract |
火山噴火の前にマグマ本体やマグマから発散される火山ガスが地表近くに移動してくるはずである.また,近年本研究者らが問題にしている噴火未遂現象においても火山ガスの散逸が重要な役割を果たしていると思われる.この物質の移動は,主として地殻変動観測によって捉えられているが,地殻変動をもたらしている原因がマグマであるか,熱水であるか,火山ガスであるかを判別するには,重力観測が有望と期待されている.従来,重力観測は絶対重力計などによる観測が行われてきたが,ここに重力勾配観測を行うことにより重力変化をもたらしている密度変化の深さに関する大きな制約条件が与えられる可能性がある。重力勾配計は,東京大学宇宙線研究所の黒田教授が開発し,実験室レベルでは十分な精度を出している.この重力勾配計が実際のフィールドにおいてどの程度適用可能であるか,どのような改良が必要かを検討するのが本研究の目的である. 平成24年度は,東京大学宇宙線研究所に設置されていた重力勾配計を京都大学火山研究センターに移設するための予備調査および協議を6月に行い,7月に移設作業を行った.その後ただちに機器の調整を潮見が継続した.この過程で,設置する場の利便性などに関する問題や,連続観測を行う上で落下体が摩擦によって帯電するなどの問題が明らかとなり,それぞれ問題を解決している. 一方,阿蘇火山における地下水の移動がどの程度起きているか,重力勾配としてどの程度の変化が期待されるかを検討するため,当施設研究員のソフヤン・ヤヤン博士と共同で阿蘇火山周辺の繰り返し重力測定を実施し,解析を行った.その結果,集中豪雨による中岳湯溜りの水位上昇と周辺への地下水の流出に対応すると思われる変化が検出された.この結果は,米国地球物理学連合秋季総会で発表するとともに,論文として公表している.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
重力勾配観測を火山地域で実施するための課題について,本研究者のうち鍵山は比較的楽観的であったが,実際の設置・調整を共同で行う過程において機器開発において現場観測に必要な要件を現重力勾配計が満たしていないことが明らかとなってきた.これらの問題点を抽出し,個別に対処してきた段階であるが,火山研究センター内において連続観測を行える段階にまで到達しており,同様な環境下であれば観測を実施できるところまできている. 地下水の変動に伴う重力の変化を検出する作業については,重力変化が季節的に頻繁に起きていうることを確認できている.これらの変化が生じている領域を精度よくとらえる観測網を整備する段階に来ている.
|
Strategy for Future Research Activity |
地下水の変動に伴う重力変化について,おおよその傾向はつかめるようになってきたが,その移動を定量的に解析するにはまだデータの蓄積が十分ではない.そのため,繰り返し重力測定を今後も継続し,季節的な気象変化によって生じる地下水変動の量を明らかにして,地下水変動と重力変化との関係を明らかにできる知見を確立していく.この重力変化と重力勾配観測の結果の関係について今後検討していく必要がある.また、重力勾配計を山頂など他の地点に移動して測定を行う手順についても検討する必要がある.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
繰り返しの重力観測を頻度をあげて実施し,密度変化が発生している場所を精度よく推定できる観測体制を構築する.重力勾配観測がほぼ定常的にデータを取得できる状態となってきたので,火山研究センターにおいて2か月程度データの蓄積をはかり,その後山頂等の他の測定点に移設する手順を検討し,計測を試みる.この移設に伴う問題点についても課題と方策を明らかにしていく.
|