2012 Fiscal Year Research-status Report
汎用数値雪崩モデルの構築と雪崩減勢工設計手法の最適化
Project/Area Number |
24651205
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
木村 一郎 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60225026)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清水 康行 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20261331)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 雪崩 / 数値解析 / 粒子法 / MPS / 減勢工 |
Research Abstract |
本年度は雪崩を再現するための数値解析手法の基礎となる「ベースモデル」の開発とそのパラメータチューニングを行った. まず,これまで研究代表者らが行ってきた非圧縮性流れに関する粒子法(MPS法)に基づく雪崩モデルを基礎とし,これを実用的雪崩挙動予測モデルとするため,雪の構成則の同定と,各種パラメータの影響についての感度分析とパラメータチューニングを実施した.構成則については,研究代表者らが独自に開発を進めているビンガム流体・ダイラタント流体複合モデルとともに,既往の平面二次元型雪崩モデルで採用されてきた,Herschel-Bulkleyモデルの2つ方程式について検討を実施し,雪崩スケールによる適用性の相違について考察を行った. モデルの検証には,小スケール雪崩として,北海道大学工学研究院において行われた雪崩実験結果を,大スケール雪崩として既往の実雪崩の観測データをそれぞれ採用した.この結果,いずれの構成則モデルを用いた場合でも,雪崩運動特性の再現性は概ね良好であったが,比較的大スケールの雪崩については,Hershel-Bulkley型モデルの方が,適用性が向上するという可能性が示された. 次に,粒子法における各種パラメータの計算精度や計算速度に及ぼす影響についての検討を実施した.計算効率と精度に最も影響を及ぼすパラメータは粒子スケールと考えられ,これは差分法における計算格子サイズに対応する.今回比較対象とした2m程度の落差の雪崩実験に対しては,1cm程度,実スケールの雪崩については50cm程度の粒子サイズを用いた場合,実用的な計算時間で良好な結果が得られることが示された. その他のパラメータとして,内部摩擦角,雪密度等の影響についても若干の検討を実施した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
雪崩の流動中,及び流動から静止に至るまでの雪崩運動数値解析モデルの構築については,研究の進展は比較的順調であり,ほぼ今年度の目標を達成することができた.しかしながら,雪が静止した状態から,外部からのなんらかのインパクトによって雪崩が大規模にスタートする,「雪崩開始数値解析モデル」の構築については,まだ検討途上であり,物理的な合理性をもったモデル化手法の開発にはいたっていない.昨年度は,この雪崩開始数値モデルについて,流体の構成則のフレームワーク内で種々の検討を行ってきたが,流体としての枠組みの中でのモデル化には限界も見えてきた.今後は,さらに構成則の枠を広げて塑性体モデルを含めた複合体としての検討が必要とも考えられる.これらの検討については,25年度以降継続して実施していく予定である. また,粒子法に基づく雪崩モデルの妥当性は,ある程度検証されたきたが,実用的なモデルとするには更に多くの条件で検討を行う必要があり,これも課題として残っている. 成果発表については,査読月国際ジャーナルに一編の論文が掲載された.インパクトファクター付き論文の掲載の意義は大きいと考えられるが,国内の学会発表,国内論文の掲載等は0であったため,今後はより幅広く情報発信してい必要があると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
粒子法を用いた雪崩の動的挙動に関するベースモデルについては,運動時,運動から静止までの過程の双方について,ほぼ完成の域に達している.今後はさらにスケールや条件を変化させて検討を実施し,その妥当性やモデルパラメータのさらなるチューニングを行っていく. 雪崩開始モデルについては,流体モデルに加えて,塑性体+流体複合モデルについてもその検討の幅を広げ,引き続き研究を進めていく. 今年度は冬季に雪崩の追加実験を行う予定であり,上記の雪崩数値解析モデルの検証用データとして,既往の実験結果に含まれない条件について実験データの収集を行う.実験は北海道大学敷地内に設置された木製の実験用斜面を用いて実施する予定である.この実験には研究協力者で,雪崩に関する実験や観測実績の豊富な大槻,斉藤,イセンコ(以上,株式会社スノーイーターズ)の協力,指導の下で行うこととする. 今年度から減勢工に効果に関する検討に着手する.減勢工のタイプとしては,当面は並列杭型に限定して検討を行う.まず,数値解析において減勢工のモデル化を行い,定性的な再現性について検討を実施する.この際,減勢工の杭要素についても粒子の集合としてモデル化する必要があるため,粒子スケールが計算精度に及ぼす影響についても再度検討する必要がある.冬季において減勢工の効果についての実験を実施し,データの収集を行うとともに,数値解析結果と実験結果の比較を通じて,減勢工を考慮した場合のモデルの妥当性を確認するととももに,必要なチューニングを行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
24年度は,雪崩シミュレーションモデルの開発に用いる計算エンジン用コンピュータとして,既存のものや,別途予算で新規購入したものを有効活用したため,計算機購入関係の出費が当初の予定より相当低く抑えられ,未使用額が生じた.25年度は,モデルの検証のために,雪崩模型実験を行う予定であり,24年度未使用分の研究費はこの雪崩実験実施用の消耗品や計測センサーの購入,実験補助謝金支払い,雪運搬用レンタカー代等に活用する.
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