2012 Fiscal Year Research-status Report
疾患感受性領域の検出に特化した核内染色体空間配置決定法の開発
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24651221
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
長谷川 舞衣 新潟大学, 脳研究所, 研究員 (50596153)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 核内高次構造 / クロマチン構造 / 発現制御 / ポストGWAS |
Research Abstract |
ゲノムワイド関連解析(GWAS)は、多因子疾患の遺伝的要因の検出を目的として精力的に行われている。2000年代の後半から、大規模検体を用いたGWASの結果が次々に報告されており、それぞれの研究で、疾患と強い相関のみられる多数の染色体領域が発見された。しかし、それらの中には、イントロンや遺伝子間領域に存在するために病態の理解へ結びつきにくいものも多くみられる。近年、そのような疾患感受性領域のいくつかが、核内で空間的に近接する遺伝子の発現を制御していることが報告されていることから、本研究では、GWAS で見出される数十kb の感受性領域と近接する他の染色体領域を効率よく検出する手法を開発することにより、GWAS で得られた知見をこれまで以上に有効に活用できる体制を構築することを最終的な目標とする。 平成24年度は、核内の近接構造の検出法のひとつである、chromosome conformation capture (3C)法を改良して、数十kb の染色体領域に対する近接構造をゲノムワイドに探索する手法とするための条件検討を行った。まず、核内の近接構造を網羅的に含むライブラリを調製することが必要であったため、3C法の派生技術のひとつであるtethered conformation capture (TCC) 法を、神経系の株化細胞で実施するための条件検討を行い、適切な条件を得た。また、得られたライブラリの中から標的とする数十kb の染色体領域を持つ断片を濃縮できるか、濃縮が可能な場合はそれが妥当な処理であるかを確かめる必要がある。その検証に必要な濃縮用のプローブを合成するにあたり、2 種類の細胞で発現量に大きな差がみられる遺伝子では、周辺の核内構造でも差がみられることが期待できることから、exon array による発現解析を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
神経系の腫瘍(神経細胞腫、グリア細胞腫)に由来する2種類の株化細胞から、染色体全体の近接構造ライブラリを調製するための条件を確立できた。また、それぞれの株化細胞で、exon array を用いた発現解析を実施し、細胞株間で発現量の大きく異なる遺伝子領域を抽出できた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の申請後、染色体領域の近接構造の情報として使用できるキメラDNA 断片を効率よく回収できる、TCC 法が報告された。TCC 法はキメラDNA 断片の収率を上昇させるのみならず、タンパク質-DNA 複合体の近傍を濃縮する工程によってノイズが低減できることが期待されたため、この新しい手法にしたがってライブラリを調製することに計画を変更した。そのため、当初の予定とは異なる試薬や消耗品を購入したこと、および、計画の変更のための一時的な研究の遅延のために、当初予定していた学会発表を見送ったことにより、当該研究費が生じた。今年度は、以下の4 項目を実施する。 (1) 2 種類の細胞株間でmRNA の発現量に違いがみられた遺伝子領域に対してRNA プローブを設計し、これを用いてTCC ライブラリから標的領域の濃縮ができるかを検討する。 (2) (1) が可能であった場合には、それぞれの細胞株から調製したTCC ライブラリを濃縮して次世代シーケンサによる配列の決定およびマッピングを行い、濃縮された染色体領域と近接する領域の座標と頻度から、それぞれの近接構造の確からしさを統計解析により求める。 (3) 確からしい近接構造が得られた場合、RNA プローブの設計に使用したexon array の結果と照合し、近接する染色体領域に存在する遺伝子の発現量との間に相関がみられるか検討する。 (4) TCC 法で調製したライブラリは、キメラ配列の近傍に転写調節因子などのDNA 結合タンパク質が存在していたと期待されることから、近接する染色体領域付近の認識モチーフの検索を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上記の計画にしたがって研究を進めるにあたり、(1) (2) については、サンプル調製に必要な培地、生化学試薬、プラスチック消耗品、次世代シーケンサでの配列決定に必要なキット、試薬および消耗品を購入する。(3) (4) については、次世代シーケンサから出力される膨大なデータを保存するためのストレージ、マッピング後のデータを解析するための専用の計算機を購入する。なお、今年度は論文の投稿と学会発表を予定しているため、そのための諸費用を研究費から支払う。
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