2012 Fiscal Year Research-status Report
微生物の代謝活性と局在性を同時検出するマイクロイメージング技術の開発
Project/Area Number |
24651232
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
下山 武文 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10534878)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 応用微生物 / がん / アセトアルデヒド / 腸内細菌 |
Research Abstract |
本研究ははじめの目標として,アルコール症患者と健常者の腸内細菌叢の違いを明らかにすることを掲げた.このため,久里浜アルコール症センターの横山先生からアルコール症患者の糞便サンプルを提供していただき,DNAを抽出後,網羅的にシークエンスすることで微生物の組成を明らかにすることを試みた.この結果を受け,糞便サンプルのアルコールおよびアルデヒド代謝能を調査した後,微生物叢を解析した.アルデヒド代謝に深く関与すると思われる代表的な微生物の存在が確認できた場合には分離を試み,分離株のアルデヒド生産・分解活性の評価を行う予定である.ここまで準備できた際は,アルコール症センターでは定期的に入手できるアルコール症患者のバイオプシーサンプル(ポリープ)の一部分を同センターの水上健先生から提供していただき,微生物の局在性を調査する.具体的には,電子顕微鏡観察,蛍光顕微鏡観察によって微生物のポリープ状での局在性を調査する. さらに初年度は腸内細菌のDNAを抽出し,より詳細に組成を明らかにするため,次世代シークエンスによって調査した.ここで検出された微生物のアセトアルデヒドを生産能を詳細に解析し,血中から染み出してくるエタノールを基質としてアセトアルデヒドを生成しているモデルを構築した.この時の腸内細菌の遺伝子発現変動をmRNAのパイロシークエンスを行い,腸内細菌全体のエタノール代謝経路を解析することを試みる.またこのパイロシークエンスによってポリープ表面でアセトアルデヒドが局所的に生産されることを証明する.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り,アルコール依存症患者のポリープを用いて,微生物叢の詳細を明らかにした.ここで検出された微生物のアセトアルデヒド代謝能の詳細については次年度の目標に掲げた.次年度はポリープ表面に生息する微生物の検出を行うが,これは微生物叢の調査の結果明らかになった微生物を対象に行える.またこれらの微生物のアセトアルデヒド代謝能については現在手法を開発中であるが,微生物を絞り込めたことで,検出系開発の見通しが立てられる.
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Strategy for Future Research Activity |
前年度のパイロシークエンスの結果の解析を引き続き行い,腸内細菌全体のエタノール代謝経路を解析する.エタノールの有無によって生じた遺伝子発現の差を検出できたら,塩基配列から微生物種を推定し,アルデヒド生成に関与する微生物種の分離を試みる.今までの腸内細菌の研究では腸から分離した微生物の性質を調べる際,試験管内で代謝能を評価している.この場合腸内環境での生育環境を再現できているか判断するのは困難である.腸表面ではpHグラディエントがある粘膜層で覆われており,この粘膜層の厚さは微生物のヒトへの感染へ大きく影響することがわかっている.そこで微生物の性質を調べる際,pHグラディエントや微好気酸素濃度条件など,できる限り腸内環境を再現する擬似腸粘膜構築法を開発する.この擬似腸粘膜を用いてより現実に近い解析結果をえることを試みる. 微生物代謝評価方法が確立できた後,ポリープ上での微生物の局在性を調査する.具体的には,特定微生物のRNAと結合する蛍光標識DNAプローブを設計し,ポリープサンプル表面の微生物局在性をFISH(Fluorescence in situ hybridization)法で検出する.このことによって,大腸発がんを誘発する微生物と腸内での局在性が明らかになるものと期待できる. もし腸内細菌の生成するアセトアルデヒドによってポリープが悪性腫瘍に変化する場合,ポリープにはDNAの変化が誘発されているはずである.これを確かめるため,微生物のマイクロコロニーとアルデヒド濃度が高い場所をFISHによって検出できたときに,この部位のアセトアルデヒド-DNA付加体を定量する.これによって微生物によってDNAに変異が起きることが確かめられる.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
引き続き,次世代シークエンスで遺伝子の網羅的解析を行うため,研究費を計上した.また,アセトアルデヒド検出系の開発のため,蛍光観察用試薬を計上した. 次年度使用額は,当初予定していた次世代シークエンスのうち,未実施分を25年度に延期することによって生じたものであり,延期した次世代シークエンスに必要な経費として平成25年度請求額と合わせて使用する予定である.
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